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[コメント] 機動戦士ガンダム III めぐりあい宇宙編(1982/日)

この映画が伝えたかったことは「戦争の無情さ」。子供の頃は何も分かっていなかったが、この作品には、複雑な人間模様を通して反戦メッセージが深く刻み込まれている。いくら憎しみや怒りを戦争にぶつけても結局得るものは何も無い。ラストのアムロの言葉は唯一の救い。
Pino☆

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 この映画は、単なるアニメではなく、立派な反戦映画だ。

 パート1〜パート3まで続けて観て、初めてそう思った(気付くのが遅過ぎる・・・)。子供の頃、このトリロジーは全て劇場で観たのだが、そんなことには気付いてもいなかった。正直言って、あの頃は、メカが繰り広げる戦闘シーンがメインであって、人間ドラマなんてものは刺身のツマのようなものだと思っていた。だから当然、人間が繰り広げるドラマは殆ど真面目に観ておらず、「次は何のプラモ作ろうかな・・・」なんて、全く別のことを考えたりしていたのである。まあ、よっぽどのマニアを除けば、僕らの世代は、みんなそうだったように思うが・・・。

 しかし、改めて観てみると、この映画、非常に重い。

 人工増加対策によって作られたコロニーが独立戦争を引き起こすというシチュエーションからして、かなりディープだが、そこから繰り広げられる人間模様はもっと重い。ファシズムの台頭、否応無しに戦争に巻き込まれていく人々、戦闘兵として連れ出される少年達の苦悩と葛藤、戦争による家族の崩壊、生き別れになる人々、軍での内紛、愛する人・尊敬する人の相次ぐ死・・・ こんなにも多彩なドラマを描き上げた戦争映画は、アニメに限らず、この映画までに無かったものだと思うし、今後も作られることはないだろう。そういう意味でも、賞賛すべき映画だ。

 さて、この映画を通して製作者が伝えたかったメッセージは何だろう? 間違っているのかもしれないが、私が何より感じたのは「戦争の無情さ」である。 復讐に燃えたシャアにも、操り人形のようになりながらも1人前の兵士として勇敢に戦ったアムロにも、愛する人を失った人、深い哀しみを残して去っていった多くの人にも、戦争は何も残さなかった。このメッセージは、並の戦争映画より、よっぽども説得力がある。憎むこと、殺し合うことから生まれるものは何も無い。

 「僕には、まだ帰れるところがある」

 あれから20年。日本はともかく、未だに地球上では、人類同士が醜い戦争を続けている。アムロの最後の言葉は、我々の未来に対する希求のようにも思えた。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (7 人)死ぬまでシネマ[*] ユキポン[*] tredair[*] ミッチェル ハム[*] らーふる当番[*] シーチキン[*]

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