大体、あの名匠がなんでわざわざ『インファナル・アフェア』のリメイクに手を出したのか、謎である。これだけ豪華なキャストを使っても抜きん出た役者が一人もいない。何故だ？　冒頭から素早いカット割、鳴りっ放しのロック・ミュージック、そして無機質なバイオレンス・・・は、この監督の十八番のはずなのにちっとも新味が無い。やたら同じ様な場面ばかりぶっきらぼうに垂れ流されているみたいでしんどい。この「しんどい」演出のせいでキャラクターにちっとも感情移入できないのだ。設定が生かしきれていないし、アクションシーンの臨場感も薄かった。ひどく散漫である。またまた『ギャング・オブ・ニューヨーク』と同じ過ちを犯してしまった。これではせっかく秀逸な素材（オリジナル）を提供してくださった香港のスタッフに対してあまりに失礼。いや、僕などは（オリジナル）を別個に考えて、ある程度距離を置いて鑑賞したが、それでも最悪だった。特に後半の展開などは「ええっ？？」が３回ぐらい続いて脱力し、「もしかしたらこの監督・・ヤバいかも・・・」と初めて寒気を感じたほどである・・・。

結果、この映画はただの「無」と化した。全てが「無」である。まあ、超尺を飽きさせなかった演出力だけは評価できるとしても。

それ以上にこんな映画でスコセッシにオスカーなど獲って欲しくない、というのが僕の願いである。出来ればラジー賞リメイク部門を受賞したら、少しホッとなるかも知れない。

もう絶対にリメイクには手を出すなよ！　『酔いどれ天使』とか。