コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 不都合な真実(2006/米)

地球温暖化について描かれたゴア前副大統領主演の映画。「不都合な真実」は誰にとてっての真実なのか。BSE問題やイラク戦争と対比してみると面白いかもしれない。
paburo57

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 「不都合な真実」ゴア前副大統領が出演した映画だという。これと温暖化問題というだけでだいたいの内容は予想がつく。

 ドキュメンタリータッチでゴア前副大統領が、聴衆に講演をするような形で映画は進む、地球温暖化についての内容は、少し興味を持って情報を追っている人たちにとっては、目新しいものはない。しかし、あまり今まで関心を持たなかった人たちにとっては、見ごたえのある映像と分かりやすい解説がされている。

 この映画の題名の「不都合」という言葉の意味は、見る前から予想がついたとおり、アメリカにとって不都合であると言うことだった。京都議定書さえ批准しようとしないアメリカという国は、自分の国が一番地球温暖化に大きな影響を与えている国であるにもかかわらず、世界で最も無関心な国である。

 この自分勝手さは今までも様々なところで見てきているから、驚くことではない。その最たるものが「BSE」問題だろう。アメリカでBSE感染牛が発見されてから、日本が日本並みの安全作を要求したにもかかわらず、それに対しては真摯な態度をとろうとせず、いまだに数パーセントの抽出検査のみで済ませている。それにも拘らず、安全だと称して、日本に牛肉の輸入を要求。その挙句、約束違反の危険部位入りの牛肉を輸出している。

 アメリカにとって食肉産業は食生活に直接的に関係するので国民全体に対する影響が大きい。その牛肉が危ないとなったら、それは日本人にとって米が危なくて食べられないといわれるのに等しいだろう。BSE問題はまことにアメリカにとって「不都合」なのだ。

 しかし、アメリカでは数パーセントしか検査しない牛からBSEが見つかったとするならば、どう考えても、検査されていない牛の中には、もっともっとたくさんの感染牛がいて、世界中に流通しているということが考えられるのだ。

 自国にとって「不都合な真実」がある場合のアメリカの態度はこのように自分勝手なものである。この延長線上にイラク戦争もまた行われたことは明らかだ。おそらく10年以内にBSEが人間に感染したと言う事実が明るみに出るだろう。そうなった時にどのような打撃を受けるかアメリカは目を瞑っている。

 それと同じく、地球温暖化もまた同じで、気がついたときには、この問題がアメリカに大きな打撃を与えるであろうことは、予想しがたいことではない。多かれ少なかれ、人は「不都合な真実」には目を瞑り、自分に都合のよいものだけに目を向けがちだ。その答えはそんなに遠くない将来にはっきりすることだろう。

 教養番組の様相を呈しているこの映画であるが、この真摯さ、自分勝手でありながらも、このような映画を成立させうるアメリカという国は、静かに徹底的に国家統制が進む日本よりもまだ、希望があるのかもしれない。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (5 人)Myurakz[*] アルシュ[*] Keita[*] IN4MATION[*] 死ぬまでシネマ[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。