[コメント] ゾディアック(2007/米)
クライムシーンの緊張感から一転、昼間の新聞社に舞台が移ってからは、サスペンスというよりむしろ歴史ものや伝記映画の語り口に近くなってくる。それが退屈かというとまったくそんなことはなく、演技巧者によって丹念に事件が肉付けされていく様子はスリリングだ。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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新聞社、SFPD、テレビ局と、事件がエスカレートしていくにつれ、リレー形式に立役者が入れ替わる構造は、現在進行形のライブ感に溢れている。父親世代に敬意を表しつつ、史実を生の人間の営みに転換していくマーク・ラファロ、アンソニー・エドワーズ、ロバート・ダウニーJrがすこぶる魅力的だ。
終盤、当事者たちの栄枯盛衰を静かに締めくくるかに見えたジェイク・ギレンホールが、燻る事件に再び火をつけるというプロットの捻りには驚いた。捜査官詣でをするシーンでは、彼にとっては初対面でも、観客には馴染み深い顔が出てきて、我々は知らず知らずのうちに両者に共感してしまう。取材相手もまた血の通った人間であり、単なる役人ではないということだ。
ギレンホールのユーモラスなキャラクターが、思いも寄らなかった着眼点を運んでくる。依然物語は現在進行形のまま、すべてが両手からこぼれ落ちて時代は現在へと繋がる。時間軸をいじったりといった技巧に走ることなく、歴史の積み重ねを丁寧に描き出したフィンチャー監督の気合が感じられる力作。
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