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[コメント] NINE(2009/米)

ダニエル・デイ=ルイスが(純粋にルックス的に)超格好いい。私は七女優と天秤にかけてもデイ=ルイスを取る。音楽は弱い。ニーノ・ロータがいればこれだって傑作風に見えたかも。とりあえず耳に残るのはパンチ力があるケイト・ハドソンの「シネマ・イタリアーノ」か。あと、ジュディ・デンチがいいことを云う。
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このデイ=ルイスはそれこそマルチェロ・マストロヤンニと肩を並べるくらい格好いいし、チャーミングだ。サングラスも無精髯もスーツの着崩しもこれ以上ないほどにばっちり決まり、細身の長身を所在なげに折りたたむような身体操作に胸きゅんする。すでに動き出している大プロジェクトを極私的事由で中途で放棄してしまう、しかも女たらし。という最低男でもこれくらいチャーミングなら許されるのかもしれない。デイ=ルイスになれない私は真面目に生きようと誓う。

女優たちの見せ場はパッチワーク的に繋がれ/断たれ、化学反応が生じない。映画に対する「ミュージック・クリップ的」という印象は、ミュージカル・シーンの撮り方とともにそこからも導かれる。さて、そのミュージカル演出にはやはり満足できない。私がミュージカルに求めるものを思いきり即物的に云えば「笑顔」「群舞の引きの画」「持続的なワンカット、または滑らかなカット繋ぎ」「個人技」だ。この映画にはそのほとんどが欠けている(これらを比較的多く満たしているのがハドソンの「シネマ・イタリアーノ」であるという云い方もできます)。ミュージカルが舞台の枠に縛られて空間的な驚きを創出できていない。

しかし、というか、だからこそ、私はラストシーンを支持したい。作中人物が全員集合してソフィア・ローレンを中心としたフォーメーションを決め、それをバックにデイ=ルイスはついに撮影を開始する――これはやっぱり感動的だ。もちろん『8 1/2』と比べてしまえばだいぶ見劣りはする。なにせそこではロータの物悲しいマーチが響き渡るなか『NINE』以上の大量の人々がどこからともなく現れてダンスを始め、メガホン片手に演出をつけるマストロヤンニ自身までもその列に加わってしまうのだから。それでも「浜辺のロケーション」に対して「チネチッタのスタジオ」を、「動き回るマストロヤンニ」に対して「ディレクターズ・チェアに腰を沈めるデイ=ルイス」を選択してみせた気概は買いたい。『ホワイトハンター ブラックハート』のように、あるいは『アメリカの夜』のように感慨深いではないか。

女優で誰かひとり、ということならニコール・キッドマンの一点勝負だ!

(評価:★4)

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