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[コメント] 世界にひとつのプレイブック(2012/米)

マルクス兄弟にしても『赤ちゃん教育』にしても、このブラッドリー・クーパージェニファー・ローレンスなど比較にならぬほど気の触れた作中人物は映画史上にごまんといたわけだが、キャラクタの異常性に診断名を与えることでもって物語の動力源を調達するあたり、これは確かに現代的気分の喜劇である。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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結果として『あの日、欲望の大地で』以来見守り続けていることになるジェニファー・ローレンス。当初期待していたのとはちょっと異なった方向にルックスは成長しているけれども、キャラクタ造型についてはまたひとつ新たな抽斗を開けて私を驚かせてみせる。現代的と先に書きつけたが、この映画の価値はまず、むしろ彼女が時代を問わない純情のスクリューボール・コメディを生きる点に存する。

最も笑ったシーンはアメフット会場で警察沙汰を起こした後、クーパーの自宅で大規模賭博が持ち上がるところで、複数人物間でエスカレートする言葉の応酬とその他大勢のあたふたぶり、クリス・タッカーらも巻き込んでやたら多人数を押し込めた空間で喜劇性がスラップスティックに熱膨張する過程が面白い。

また、ランニングをする際にクーパーが毎度ゴミ袋(!)を着用するというのにも大いに笑う。サウナスーツの代用だそうで、入院以前はもっと太っていたらしいことも幾度か言及されている。その太っていたときの姿が写真で示されたりすることはないのだが、このようなさりげない台詞で劇中時間とキャラクタに膨らみを与える小技を見ても、まずデヴィッド・O・ラッセルは脚本家として優秀だ。

クライマクスのダンスシーンはいかにも演出が弱い。これも計算の内ということはないだろうが、クーパーとローレンスが街路で対峙する後続のシーンこそが真のクライマクスなのだから、ここは野暮を云いかけた口を閉ざして、二人の告白にうっとりと耳を傾けたい。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)おーい粗茶[*] ゑぎ[*] 緑雨[*] けにろん[*]

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