[コメント] 人のセックスを笑うな(2007/日)
好きな画作りではないはずなのに、最後まで引き込まれた。いろいろな要素をはらんで、いろんなことを考えさせてくれるから、常に琴線を刺激されるような気がした。久々に新鮮な感激を覚えた。映画賞と無縁なのはどういう訳だ?
2009.10.15 会社の同僚が貸してくれたDVDを鑑賞。
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映画の好きな人なら誰もが気付くであろう、引きの固定カメラによる長回しの連続。この映画はほとんどそれで構成されている。ずっと同じ背景を前に、登場人物は特別ダイナミックな動きをするわけでもなく、長台詞や大熱演をするってわけでもない。なのに、彼らを客観的に観察するようでいて実はその息づきや、心の動きをリアルに感じていつの間にか映画の中に引き込まれているような感触を覚えるのが不思議だ。
日本映画のすごく悪いところの一つに、「カットを入れず、多少の早回しもせずに、物事をリアルタイム進行させすぎる」ということがあるのだが、この映画ではそれがかえって美点の一つになっていることに驚かされる。
それはやはり良くもこんなロケ地探し出したなと思えるほどの背景の力や、演者達のため息のようなつぶやきのような話し方、よく練り込まれた台詞、といった要素がこれ以上ないほどシンプルに構成されているのに、緊張感よりむしろユルい感じがするという奥行きというか懐の深さを作り出せている演出の巧さにあるのだろうと思う。
未だかつてこれ以上生き生きした永作博美を見たことがないし、土俵際にも見える蒼井優の悲しげな表情もまた、ものすごく良く活きている。
見ている間中ずっと物語に引き込まれながらも、既に記憶の彼方にある若かった自分を呼び出してみたり、重ねてみたり、いろいろな事を考えさせられて琴線を刺激され続けている気がした。
非常に古い枠組みのように見えながらも、その実すごく斬新なこの映画を見て、久々に新鮮な感動を覚えた。
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