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[コメント] ルパン三世 カリオストロの城(1979/日)

感動して涙が出た、みたいなことは珍しくないのだが、痛快過ぎて涙が出た、というのは、私の乏しい映画経験の中からではこの作品の他にはにわかに思い出せない。「すり抜けながらかっさらえ!」とか、「人間にしちゃ、やるね」とか、犬とペンギンの戦いとか、タイムマシンの話ぐらい、か。
DSCH

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







今更何を言うこともない作品だが、子供と一緒に改めて観ての個人的な備忘。

落とし穴だらけの巨城は『王と鳥』からの影響。ヒヒジジイからお姫様をトリックスターのオウムが救うが、救い出された先が茫漠とした自由の荒野という厳しさ(和らげてはあるが)も近似。お前さんの人生はこれから始まるんだぜ、とのルパンの台詞に対するクラリスのきょとんとした表情がいい。彼女に幸あれ。

全編通じてあまり風の印象がないのだが、大ジャンプは思えば風に乗っているのであり、クライマックスの晴れ渡った丘とやわらかな風も、監督の署名を感じさせる。

おじさんになって改めて観て変わった印象は、子供の頃にはへっぽこにしか見えなかったとっつぁんの格好良さ。クライマックスのアレ(わざと遅れて来る愛おしさよ)はいいとして、目撃した不正が我慢できず事勿れ主義のインターポールに歯ぎしりする生真面目さに打たれた。ここからのルパン追跡名義の突入、衛星中継→「ありゃー、日本の札!これはニセ札だー!」のすっとぼけが痛快でたまらない。埼玉県警の皆さんの士気の高さにも打たれるのだが、とっつぁんの直情と行動力がやはり気持ちいいからだろう。色々面倒臭そうだが、いい職場そうで羨ましい。銭形に限らず、キャラクタの魅力昇華は監督の作品の中でもラピュタと随一を争う。台詞もいちいち素晴らしい。声に出して読みたい日本語だらけだ。

これは私が初めて夜更かしして観た映画と記憶している。夜更かしといっても当時私は小学三年で、日テレの金曜ロードショーで観たからせいぜい23時までなのだが、当時の私としては異例だった。親から是非観ろと言われ、観始めたら止まらなくなり、22時頃に録画しているからいったん寝ろと言われたのだが、その時点でクラリスの幽閉塔への潜入直前(「面白くなってきやがった!」)なのだからやめられるわけもなく、親も親なのでやめられるわけもなかろうと許してくれた。しかしこの時点で「このままでは風邪を引くな」という予感があり、悪寒に耐えながらしかし見せ場がつるべ打ちにやってくるのでやめられず、見終わって風呂に入った段階で興奮と悪寒に震える有様で、案の定風邪を引いた。翌日が土曜でよかった。いい思い出である。思えば、初めて夜更かしして読んだ漫画はナウシカ原作であり、監督にはやはり感謝してもしきれない。

新宿高島屋内にあった劇場で、閉館前の名画アンコール企画があり、本作が上映されていた。他のラインナップも良かったが、私の中ではこれが飛び抜けて観たい一本だった。あの序盤のカーチェイス、崖上からの逆落とし、「今度のはただの弾じゃねえぞ、、、!」を劇場で体験したかった。結局観に行けなかったのが心残りである。

子供たちは大ジャンプのシーンでゲラゲラ笑っていた。私と同じだ。警部、いい人だね、と娘は言っていた。さすが、わかっているな娘よ。

(評価:★5)

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