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[コメント] バベル(2006/仏=米=メキシコ)

いかにも大上段に振りかぶった表題と「風が吹けば何とやら」的な筋に、「”関係性”の罪と罰と救いの映画だよな」と念じつつ一生懸命目を凝らすも、つながりが半端で、そりゃ何もかもつながってるのも変だしこれがリアル志向なのかしら、となお血走った目を凝らすも、妙に美しいブランシェットピットのアスリート走り、菊地のガッツ、よく分からん撮影、底の浅い「異邦人」感等あらゆる違和感に幻惑され脱落した。
DSCH

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この映画そのものがディスコミュニケーションの産物であるような気がして、あたかも全てを理解したような「神の目」が何も理解していないように見えてしまう時、ここで映画もろともイニャリトゥがテーマに敗れたと解釈されてしまい哀しい。どこか不幸な、ドン・キホーテ映画に見える。

言語を超えたコミュニケーションの成功に胸が熱くなる瞬間もあるが、監督の要請を確かに理解し、言葉を持たず肉体をさらす菊地のガッツに、気持ちは分かるがハンディキャップ描写がちょっと軽率に過ぎやしないか、誰かが怒るんじゃないか、それともこれをハンディキャップと呼んで本質を理解していないのは俺なのかととにかく冷や冷やする。

「あわてて作られた歴史」に立脚する東京のビル群が「バベルの塔」と重なる時、ああそういう都市批判って押井さんが喜びそうだなあバビロンプロジェクト後藤隊長シゲさん黒っ!とぼんやり無関係なことを考えてしまったり、そもそも東京だけが世界の中心になり得るわけではなく、それはどこでもそうだよ、というのが本来だからこういうアプローチではハナから立ち向かえる相手ではなかったんではないか、安易に解決されても気が休まらないし、と哀しい気持ちで思ったり、とにかく色んな雑念が頭に浮かんでは消える。そういう雑念が入り込まないように演出頑張って!と思っても、妙に美しいブランシェットピットのアスリート走り、菊地のガッツ、繰り返すが的確すぎる菊地のガッツが何もかもを凌駕してかえって色々どうでもよくなってしまい、しかも撮影が肌に合わなくて、悩まなきゃ悩まなきゃと眉間に皺寄せっぱなしでいたらついには頭痛に悩まされてしまい、ああ高尚で崇高なテーマなのにこんなに心の冷めた私をお許し下さいごめんなさい獣医さん怖い砂漠で迷子は嫌だところで二階堂智って誰じゃいちょっとかっこいいかもああそれにしても菊地のガッツ、とぐちゃぐちゃな頭のまま劇場を後にしました。でも★2をつけることは神罰がくだりそうで私には怖くて出来ない。

余談ですが、ハナから「そこへなおれ!」と正座させられる映画よりも、気がついたら正座させられていた、っていうくらいの映画のほうが、いい映画だと思います。

(評価:★3)

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