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[コメント] 羊たちの沈黙(1991/米)

「視線」の物語。記憶の克服と絶対善へとクラリスをいざなう導師レクターの挑発的かつ透徹した眼差し。覚醒し人として存在意義を賭けて戦うクラリスの眼差し。それは「対決」ではない。「愛」の不可解な「共犯関係」。フジモトショアの職人仕事が低温かつ鋭い緊張感の屋台骨を支える。そして対置される「熱っぽい視線」。「熱」こそが人を動かす。それが善であるか悪であるかは問題ではなく。
DSCH

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「視線」の映画だ。レクターに言わしめるように、人の目は必ず「何か」を追い求める。クラリスを「視姦」する田舎の警官ども。上司からクラリスへ向けた視線。ビルの暗視ゴーグル。検屍。鏡に映った己の姿。スケッチ。議員の娘の写真。ありとあらゆる写真たち。「視る」という行為の多くがアップカットで撮られる。それは「執拗」と言ってもよいレベルであり、「執拗」であるものこそは「テーマ」である。

「視たものを、欲しい、と欲する」「視たものを、救いたい、と欲する」 「視たものを、知りたい、と欲する」「視たものを、殺したい、と欲する」

そして、「視たものを、食べたい、と欲する」

視る、という行為は「愛」であり「暴力」である。おそらく、そのいずれでしかない。なぜ、彼らは「視る」のか。あるいは、なぜ、彼らは「目を逸らさない」のか。

これは「視線」の映画である。そして、映画とは「視線」そのものなのではなかったか。

・・・何て知ったようなことを書いてしまいましたが、8割方本気ですよ。

※ ところで全然違う映画のネタバレ話ですが、『ブレードランナー』でルトガー・ハウアーが「父」タイレルの目を潰しますよね。レクターも看守の目を潰します(まあ催涙スプレーではあるのですが)。「目を潰す」って行為に意味がこもってる映画っていい映画多いんだよなあ・・・って何だそりゃ。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)pori[*] 袋のうさぎ 3819695[*] ジェリー[*] 煽尼采

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