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[コメント] 彼らは生きていた(2018/英=ニュージーランド)

例えば『プライベート・ライアン』や『戦火の馬』などでは人間性の損失や戦地での友情が美化されがちだが、トイレ事情や食事、不衛生な生活環境など、事実をまっすぐ伝えており、塹壕足や毒ガスなど、言葉だけでは伝わらに「記録としての事実」は重い。それでも文句を言わず命令に従い「男になる」若者たちが、「生きて帰れてよかった、そうするしかなかった」と答えるのが悲しい。
jollyjoker

・異なるスピードで撮影されていた100年前の映像を24フレームに統一するといった、丁寧で細かい作業で復元。

・音声は残存するインタビューから引用したり、一部のアテレコは口の動きを読み取って新たに声優にしゃべらせたものもあるという。

そもそもよくもまあこんな映像を撮って残しておいたものだと驚愕。 作中、モノクロ映像から徐々にカラーへと変化するシーンでは、「その時」が見事に蘇り、生き生きとした息遣いさえ感じ、現場の若き兵士たちはモノクロの世界ではなく、確かに生きていたという生命感をあぶりだしている。

これらの映像は戦争へと駆り立てられた無知な若者が現実を知る行程でもあり、その思想にそまっていく恐ろしさでもある。そして取り上げるインタビューの音声は、戦争の理想と現実を見事に表しており、圧倒される。

・楽しくはなかったが役に立つ経験だった。 ・ボタン付けなど、自分の面倒をみるということを学んだ。 ・戦争に参加しなければ臆病者のレッテルを貼られた。 ・国に貢献できるという高揚感からお祭り気分で志願した。 ・訓練は厳しかったが、友だちとキャンプでもしている気分だった。 ・戦線が激しくなるにつれ凶暴になっていった。 ・捕虜となったドイツ兵は従順で概していい人間だったので同情心さえ生まれた。 ・長引く戦況でドイツ兵は戦うことがほとほとイヤになっていたようだ。 ・終戦を迎えても祝う気にもなれず、ただ安堵し気が抜けて崩れ落ちた。

間もなく日本公開される『1917』より先に見ておいてよかったと思う。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)緑雨[*] 週一本 ペンクロフ[*] ぽんしゅう[*]

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