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[コメント] クライ・マッチョ(2021/米)

イーストウッドは老いさえ楽しんでいる
jollyjoker

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







・ピアノのつぶやくような調べ

・古いシボレーのピックアップトラックでの老いぼれた登場

・運転席の横顔

・ひょろりとした長身の体はより細く骨ばって、足取りもおぼつかない

・昼寝のシーンをはさみ、老いを強調さえする

・元々声量は少なく吐き捨てるようなセリフが一層際立つ

・これら一連の表現で、老いを認め受容する潔さ

オープニングで「あぁ、こういうことか」と思い知る。 しかしイーストウッドは老いさえ楽しんでいた。

本作は、我々がイーストウッドに期待する強さには肩透かしを食うが、 ・大地を俯瞰するカメラ

・人間関係を築き信頼していく過程

・優しさや本当の強さ

といったものは十分に描かれている。

また、登場人物が少ないために、相手役に多弁させることでストーリーを補完していく簡潔さで変化のない風景にテンポを持たせた。

ただし、ラファと母親の演技がありきたりでやや鼻白む。 反抗期の少年があまりに素直で拍子抜けするし、ステレオタイプな母親とその取り巻きも月並み。 一方、光っているのはカフェの女主人マルタ。大きな口、くっきりした目元と存在感で、老人イーストウッドに息を吹き込んだ。本当のマッチョはマルタなのかもしれない。 また、いつもながら怪しげな男を演らせるとピカイチのヨーカムもいい仕事をした。

イーストウッド作品に一貫する「本当の強さ」「信頼」といったものはあますことなく現れており、陳腐なストーリーではあるが、ファンとしては見ておくべきだろう。子どもの未来、世代交代を匂わせるラストも良い。

これを最後の作品にしてほしくない。

(評価:★3)

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