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[コメント] 未知との遭遇(1977/米)

スピルバーグにとっても映画史にとっても大きな分岐点
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







これまで宇宙人は侵略者であり攻撃すべき対象として描かれることがほとんどだった。これはひとえに東西冷戦下における仮想敵国ソ連を象徴したものであると言われるが、それはある意味拡大解釈であり、単なる愛国主義の端的な現れだと私は思う。

とにもかくにも、そういう背景を背負って登場したこの映画、「宇宙人はお友達」という新境地(正確には過去にもあったかもしれないが)を一般化したことで、映画史上重要な分岐点に位置づけられると考える。

一方、スピルバーグ的にも大きな分岐点ではなかろうか。

これ以前の彼の監督作品(総称して初期作品と呼ぶ。『ジョーズ』のレビュー参照)がサスペンス・ホラー色の濃い作品群であったのに対し、『E.T.』以降はファンタジー色の強い作品群に変わっていく。

もちろんこの映画もファンタジーなのだが、珍しくスピルバーグ自身が脚本を手がけていることからも容易に推測されるように、元々の話は大分違っていたと言われている。もっと政府陰謀説の強いサスペンス的な要素が多かったそうだ。(その証拠に、『E.T.』でわずかにNASAが出てくるものの、強大な国家権力が登場するような話は他に見当たらない。)それをスピルバーグが大幅に改竄したことにより、この映画は両方が微妙にミックスされた作品になっていると思う。 (ついでに言えば〈特別編〉で馬脚を現してしまった)

したがって、スピルバーグが子供の視点に降りた本格的ファンタジー(童話あるいは寓話)作家になっていくのは『E.T.』からだと、私は勝手に位置づける。

E.T.』のレビューに続く

(評価:★4)

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