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[コメント] 裸の島(1960/日)

これが生きるということなのか。つ、つらすぎる・・・
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







なんでも500万円の低予算で4人の出演者とわずか13人のスタッフが合宿して作ったそうだ。

台詞が全く無いことで実験映像的な扱いを受けがちだが、台詞がないことに違和感は全くない。むしろ、それが自然なくらいだ。だが2度だけ主人公達の声が入る。笑い声と泣き声だ。生きることの最低限のことしかこの映画では描かれていない。『砂の女』にも似た生きることの不条理さまで感じる。

単調な動作をありとあらゆる構図を使って見せる(決して奇をてらったものではない)だけでも「上手いなあ」と思ってしまうのだが、「さすが脚本の手本。日本映画脚本界の重鎮」と思わずにいられない。全く台詞が無いにもかかわらず。

妻(乙羽信子)が、疲労からか、桶を倒し水をこぼしてしまう。その妻を夫(殿山泰司)が殴る。もちろん、水が貴重であることや夫の中にある苛立ち(妻に対してというよりむしろ生活、あるいは生きることに対する苛立ちと言った方が正しいだろう)の表現だ。だが単にそれだけでは終わらない。子供を失いラストで妻がブチ切れ、水をぶちまけて泣き崩れる。だが今度は夫は何もしない。ただ黙って妻を見つめる。先に殴るシーンを見せているからこそ、妻を見つめて立っているだけの演技でも、その夫の心情が伝わってくる。「ああ、伏線とはこういうものだのだな」と感心してしまった。

役者も素晴らしいし、よく出来た映画であることは認めるけど、生きるってこんなに辛いものなのかなあ・・・。

(評価:★4)

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