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[コメント] 怪獣島の決戦 ゴジラの息子(1967/日)

ミニラのおかげでえらく評価が低い一本だが、それじゃいくらなんでもこの映画が不憫だ。
荒馬大介

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 確かにミニラの顔はキツイ、という気持ちも分かる。「人気怪獣ベスト10」に対して「ワースト10」をやったりすると、なぜか上位に食い込む健闘振り(?)を見せるゴジラのせがれ・ミニラだが、せがれとはいってもその姿からすれば、ゴジラの直系ではないと思われる。考えようによっては本作は、親が誰だが不明の怪獣孤児を、ゴジラが引きとって一人前の怪獣にしてやろうという話になるわけで、要は『ゴジラvsメカゴジラ』同様、共通のものを(あるいは同類だと)感じたゴジラが近付いていったのと同じだ。「ゾルゲル島シャーベット計画」が失敗した原因は、まさにそれではないか。

 しかし本作は『ゴジラvsメカゴジラ』のような少々真面目な要素は無く、むしろギャグっぽくやっている。ミニラに放射能火炎の吐き方を教えたり(『vsスペースゴジラ』のラストはこれのオマージュか)、力強い鳴き声の出し方を教えるゴジラ。それを観て主人公の牧(久保明)が「あれじゃゴジラの教育ママ……じゃない、教育パパだな」とつぶやくのもギャグっぽい。

 では全編ギャグかというとそうでもない。先に挙げた計画や、その失敗の影響で産まれたカマキラス、そして島に巣食う怪獣クモンガのシーンはいたって真面目だ。本編では実物大のカマキラスのカマと、クモンガの足を作って俳優達に襲わせているのに加え、それら昆虫怪獣との合成シーンは特筆モノだ。合成のラインがクッキリ見えてバレバレ、という印象も無い。カマキラスに関しては音楽の佐藤勝による♪ずーっちゃっちゃ、ずーっちゃっちゃ……というモチーフ曲も忘れられない。ギャグと真面目が交互に展開していきクライマックスに繋がっていくという点では『キングコング対ゴジラ』と一緒だ。さすがに面白さはキンゴジには敵わないが。

 本作も前年の『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』と同様、一つの島を舞台にしたこともあって、別段スケールが大きい映画ではないが、ミニラの不人気のためにマイナス評価されているというのは惜しい。ある意味、『怪獣大戦争』のゴジラのシェーや、『ゴジラ対ヘドラ』のゴジラの飛行、『妖星ゴラス』の怪獣マグマにあたるようなウィークポイントとして残ってしまったのだ。ではミニラが出なければ良かったのか?それで済むような問題ではなかろう。製作者の意図と観客の反応が、必ずしも一致するとは限らない。その象徴こそが、ゴジラシリーズでいえば「ミニラ」にあたる……というのは大袈裟かな?

(評価:★4)

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