★4 | いぬむこいり(2016/日) | 遅れてきたアイドルに再び勃起するシニア左翼の夢精物語が発火点となって、戦場を駆ける中年カップルの面倒くさい青春冒険譚が燃え上がる。沖縄やエルサレムを想起する近親憎悪的対立に決着を着けるのは、異種混合が産み落とす無私無欲の純愛暴力であるという暴論。 [review] | [投票(2)] |
★4 | ぼっちゃん(2012/日) | 喜劇仕立てにしたことが大森立嗣の負け組みへの蔑みと見られかねない危うさを、熱演する水澤と宇野の自虐のリアルさが「負のパワー」に転化する。「時代の不機嫌」さに翻弄される若者を実直に描いて、『ヒーローショー』と対をなす「今」ならではの青春映画。 | [投票(1)] |
★3 | ろくでなし(2016/日) | 自分を偽ることができない粗暴な狂犬男(大西信満)の純情という、久々に目にする古典的な恋愛劇が逆に新鮮。渋谷の裏街の息づかいがリアルに漂うのも話しの陳腐化を担保する。世間を欺き続ける根っからの凶暴男で悪キャラ開眼の大和田獏は助演賞もの。 | [投票] |
★4 | 逃走(2025/日) | 桐島聡は自身の死を前にして50年隠し通した正体(本名)をなぜ明かしたのか。映画の主題はその一点に絞られる。突如社会に放り出された大学生の桐島(杉田雷鱗)の戸惑いは初々しくも逞しく、葛藤を抱えつつも飄々とした中年の桐島(古舘寛治)は修行僧のようだ。
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★4 | タロウのバカ(2019/日) | 因果が自覚できない心の痛みを、さらに上塗りするよううに無自覚に、自らの精神と他者の肉体への加虐へ向かう暴走スパイラル。説明(物語)を極力排除し、彼らの状況と行動だけで世の中にぽっかり開いた蟻地獄を表出させてゆく演出に、理屈ではい説得力があった。 [review] | [投票(1)] |
★3 | 湯を沸かすほどの熱い愛(2016/日) | 「別に逃げたっていいじゃないか」がモットーの不徳な私には、双葉(宮沢りえ)の「家族を超えた愛」の正統すぎる気迫は、いささかはた迷惑。死を前提にした意志の強要は反則技。まさか、この無差別な愛への信認の行きつく先が、世界平和の成就でもあるまいし。 [review] | [投票(1)] |
★3 | 嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん(2010/日) | 観ていて生理的にイライラするのは、扱っている題材のおぞましさのせいではなく、計算なのか稚拙なのか判断しかねるアプローチの不統一さのせいだろう。このどうしようもなく厄介な話に、どう落とし前をつけるのかだけが知りたくて観続けたが、案の定はぐらかした。 | [投票] |
★3 | 断食芸人(2015/日=韓国) | 60年代の臭いをプンプンさせた足立正生の反骨ぶりは頑固かつ明晰で、「自由が生む想念こそが、自由を束縛している」から現代は息苦しのだという主張もうなずける。ただ、くり出される狂騒イメージに既視感が漂い新鮮味なく、殺傷力は敵を倒すまでに至らず。 | [投票] |
★4 | さよなら渓谷(2013/日) | 女にとって男は忘れ去りたい存在でありながら、男が抱え込んだ悔悟の苦痛は絶対に忘れさせたくないという矛盾。死んで詫びることが男にとって救いになってしまうことを、男もまた知っている。負の磁場が生む幸福になろうとなど思っていない男と女の無限スパイラル。 [review] | [投票(3)] |
★4 | REVOLUTION+1(2022/日) | 物語は現実の銃撃犯の生来をたどる主人公(タモト清嵐)のモノローグによって進行する。若松プロにルーツを持つ製作陣らしい低予算、短期間制作の常套手段だが、この実直な語り口が題材の"生々しさ"と相まって疑似ドキュメンタリー的な迫真性を作り出している。 [review] | [投票(1)] |