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[あらすじ] すべてが狂ってる(1960/日)

戦争で父を亡くした次郎は、保険の外交員と重機メーカーお偉いさんの愛人という二足の草鞋でがんばって彼を育てる母とふたり暮らし。母の誕生日だからという理由で女の子とのデートさえソデにしちゃうぐらい「ママ大好き!」な次郎は、だからこそ、その愛人のお偉いさんが大嫌い。戦後のたいへんな時期を乗りきるためにはそうせざるをえなかったのだ、という母の話にも耳を貸さず、「彼の会社が作った兵器がオレの父ちゃんを殺したんだ!」と若者らしい少々アレな怒りを炸裂させ、欲望や希望、絶望が生々しく渦巻く享楽の街へと飛び出してゆく…。いつの時代にもある世代間の断絶と当時の若者風俗を鮮やかに切りとった71分。モノクロ。
tredair

主演女優の禰津良子(ちょっと杉田かおる似)はモデル出身だったそうで、この作品をはじめわずか数本に出演しただけで映画界を引退している。清順はとにかく彼女がお気に入りだったようで、最近のインタビューでも「今はある会社社長の奥さん。今でも付き合いがあるよ。」とウキウキ語っている。

彼女とのキスシーンに限っては自ら実演してみせたそうで(おいおい、監督特権かよ)、その時のお茶目なスチール写真がいまだに残っているとの噂も。

「当時の現代っ子ですよ。例えば原宿族なんての代表みたいな感じの。当時の風俗みたいなのが描かれているかもしれない、この子が出たことでね。」 とも(やはりウキウキ)語っている。

出演者欄の上位に名が載ることの多い吉永さゆりは、会社に頼まれて出しただけとのことでかなりのチョイ役。とは言え、清順が彼女を撮った唯一の映画だそうなので、ご興味のある方は「この映画における唯一のNOTビッチな若い女」をよーくチェックしてください。

また、冒頭では坂本・SUKIYAKI・九ちゃんのライヴシーンを見ることもできます。

松竹ヌーヴェルヴァーグに触発されて撮られた日活ヌーヴェルヴァーグ作品の第二段であるこの作品は、全編を流れるジャズや即興的なカメラの動き、斬新なモンタージュといった「いかにもヌーヴェルヴァーグ風なところ」以外にも、「当時の若者がどんなところで遊び、稼ぎ、悩み、笑い飛ばし、学んでいたのか」という風俗を知ることができ、そちらの面でもかなり「ヌーヴェルヴァーグ風」です。

現存する店の看板などもしばしば出てくるので、今の様子と比較しながら見てみてもおもしろいかもしれません。東京という街やそこに生息する若者の、ある部分の顔とその歴史。を知るうえでも、なかなか貴重な資料となりえるのかもです。

(評価:★5)

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このあらすじを気に入った人達 (5 人)AONI づん moot マッツァ カフカのすあま

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