何がって全部ですよ。始まって早々の映像なんて、（ちょっと古びているせいもあり）何かの名画が始まったみたいですし、そこからの展開の王道っぷりなんてもう「これがイギリス怪獣映画のマスターピースになるんだ！」的な意気込みをガンガン感じます。だからこそその後の展開は大体読めてしまうのですが、それでも尚「捕えたゴルゴは実はまだ子どもだった！」には「いやっほう！」と思わされてしまうわけで、それはもう本気のなせる技かと。

　またただ本気なだけでなく物語のテンポがいいです。尺も思い切って短いので、ダレることなく王道を楽しむことが出来る。特撮もそれ自体に頼り切ることなく、それを用いた「面白い絵」を用意してくれるので気持ちがいい。ピカデリーサーカス破壊のシーンはちょっと美しさすら感じます。

　ただちょっと食い足りなかったのは、ゴルゴ自身に「親子」以上の物語性がなく、「モンスター映画」の枠を飛び越えられなかったこと。そして同様に人間たちに定型以上のドラマが見られなかったこと。映画に必ずメッセージがなくてはいけないというわけではないと思うんですが、どうしても『ゴジラ』と比べられてしまうことは仕方ないことなんでしょう。

　あとそんなド本気のイギリス人には申し訳ないんですが、怪獣のデザインはもうちょっとどうにかできたんではないかと。明らかに頭と手がデカ過ぎです。他の本気が全て上手くハマって面白かっただけに、「きっとこの怪獣デザインもド本気の賜物なんだろうなぁ」と思ってちょっと居たたまれなくなります。そこが一番大事なんだろうよ！頑張れイギリス人！でも頑張ってたぜイギリス人！