[コメント] メトロポリス(1927/独)
映画を見終った人むけのレビューです。
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前々から“是非観たい作品”の上位に位置していた作品だが、ようやくレンタルビデオ店で発見してようやく拝見することが出来た(皮肉にも丁度この日『マイノリティ・リポート』を観たばかりで、SF映画の発展というものについてちょっと考えてしまった)
ストーリーはかなり無茶な上に尻つぼみな感じ。サイレントだけあってオーバーアクションの連続で決して役者も上手いとは言えない作品ではあるのだが、しかしそれを補って余りあるのが監督のイメージだった。
工場に呑み込まれていく人の波、機械の方に動かされる人間達。まるでそれはピラミッドを模した邪神の神殿を思わせる迫力(事実主人公の目にはそう見えたと言う描写があり、確信犯的な描写だったのだろう)。清楚なマリアと、歯をむき出して邪悪な笑いを浮かべる人造人間マリアの対比。人造人間マリアが権力者達を集めて行うパーティはサバトのようだし、彼女が焼かれるシーンも宗教裁判によっての火刑を模したものだろう。聖書の引用や、7つの大罪(『セブン』の主題ね)のクローズアップなど、実に宗教的に作られている事が分かる。
そこに基本的人権をストレートに絡めたので、単なる人間主義ではなく、もっと深いところ。人の奥にある宗教性をも感じる事ができる。
映画は魔法だ。言い換えれば良質の映画とは、観客を異空間に連れて行けるかどうかにかかっている。その意味で宗教性を映画の中に導入させたというのはある意味卓見ではなかったか?それにこれがサイレントであると言うのもポイントが高い。時折字幕は出てくるとは言え、基本は観ている側で考えなければならないので、色々と推測ができる。
後年日本でアニメ版が作られたが、それが失敗してしまったのは、ここにあった宗教性を完全に無くしてしまったからじゃないかな?アイドル(偶像)として存在すべき存在のティマにカリスマ性さえも持たせられなくちゃ、本作を愚弄するようなもんだぞ。
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