[コメント] 21グラム(2003/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
時間軸をバラバラにした事で、映画としてのストーりーは完全なネタばれ状態となり、観客は「ストーリーを追う(楽しむ)」という興味を失わされる。
つまり、「この男と女はいずれ肉体関係を持つ」だったり、「交錯する3人がやがてはひとつの部屋で争う」だったり、である。
しかし、そのおかげで観客の興味は「どうなるんだろう?」から「どうして?」という疑問符で頭が一杯になってゆくのである。「どうして」彼等はこういう結末になっていくのだろう?
何しろ我々はある程度、ストーリーのオチを知ってしまっているのだから・・・
こうなると、原案やら原作の面白さの次元ではなく、俳優による登場人物の心の変化が見所となっていく。そこで主役3人の芝居である。これに関しては他のコメントで語りつくされているように当然の如く「絶品」である。逆に言えば、この3人の演技力が無ければ、この映画は成立なし得ない程のものがあった。
つまりは俳優の力量を信じきったからこその大胆な編集が成立したのだ。
しかしだ・・・やはりどう考えても、オープニングから絶好調過ぎる大胆時間軸「遊び」はやり過ぎだった。登場人物たちの設定を把握する余裕もない「大胆編集」は、ただ観客を混乱に陥れるだけで、映画としての最低限の「つかみ」を放棄してしまった感すらある。(なにしろ誰と誰が夫婦なのかさえ、私には理解出来なかった)
大変面白い手法であり、後半はそれが充分に機能していたのだからこそ、残念であった。
そして最後のポイント減の理由としては、タイトルとラストで語られる「21g」の謎が、ほとんど表現されないままに、とってつけたようなモノローグで語られて終わりになってしまう事である。「喪失感」を三者三様に上手に描いていたので、大変残念なのです。
「喪失感」ってのは、各人の「平穏」やら「幸福」やら「希望」だったりするのでしょうが、ここまで書いてきて、ふと思った。「21g」はきっと各人の「思い出のアルバム」の重さなんじゃないのかなぁと。
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