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[コメント] シルミド/SILMIDO(2003/韓国)

この映画の題材となった事実は、軍事政権下で秘密にされ、近年になって少しづつ真相が明らかになってきたものらしいが、そういうものを堂々と映画にするというところに、韓国映画のパワーの源を見る思いがする。
シーチキン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







1968年1月、北朝鮮の特殊部隊が韓国大統領府・青瓦台を襲撃した、という話は知っていたが・・・・関連サイトをのぞいたが、バスジャック事件は実際に起きた事件であり、しかも当時は空挺部隊の“単なる”反乱事件として処理されたらしい。

自分の国で実際に起きた事件、歴史をドラマの題材にとりあげる、これには相当な覚悟とエネルギーがいるのではないだろうか。そういうものを持ち合わせているからこそ、韓国映画の近年のパワーが生み出せているのでは、と得心できたような気がする。

「南北敵対」という外的要因を背景に、軍事戦略が全てに優先し、それゆえに暴力と謀略によって一国を支配した、そういう自国の歴史をどうとらえるか、これは単に過去を振り返るという問題ではない、どういう未来を目指すか、ということを抜きにしては成り立たない話でもある。そしてこの映画は、二度と国家の謀略によって空しい犠牲を繰り返さない、という決意と自信を感じさせる。

映画としても、緊張感みなぎるアクションシーンで、その緊張感が、金日成暗殺への悲壮感を盛り上げ、いっそう現実感を生み出している。ところどころ、背景が浮いている安っぽいシーンもあったが、そういうものもあまり気にさせないだけの迫力があった。そういう緊張感を楽しむアクション、ポリティカル・サスペンスとしても一流であったことは間違いない。

特にラスト。おそらくは国家首脳の所へ届けられる膨大な報告書の山。その中にこの事件の真相報告書も紛れ込んでいる。だがそれは表紙に一瞥されただけで脇に置かれ、そして南北赤十字会談についての報告書には、とにもかくにも目が通される。

必要があればつくり、必要がなくなれば廃棄し、後はいっさい関知しない。それを「国家の非情さ」ということでは決してすまさない、そういう静かだが、確固とした意志が感じられた。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (8 人)アルシュ[*] terracotta 映画っていいね[*] IN4MATION[*] セント[*] 直人[*] ねこすけ[*] makoto7774[*]

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