[コメント] 血と骨(2004/日)
冒頭、済洲島から海を渡り、君が代丸から新天地大阪を一望する若き金俊平の姿は『ゴッドファーザー PART II』でシチリア島からアメリカへやってきたときのイタリア移民の姿とダブる。
移民が新天地で“強い父”を軸にして一家を成すという家族の物語は『ゴッドファーザー』と似通っている。しかしドン・コルレオーネが敵に非情であった反面、身内に人一倍の温情をかけ家族からの尊敬をあつめていたのに比べて、金俊平は外部の敵ではなく主に身内を暴力で支配し、ただただ恐れられる存在であるという点で決定的にちがう。力のみの支配がどういった帰結をもたらすか。その点で金俊平はドン・コルレオーネの後を継いだ息子マイケルとかさなる部分が多いが、金俊平はさらにマイケルをも上回るほどに孤立的だ。なにが彼をそうさせたのか? それは映画のなかでは語られない。
朝鮮移民のなかでも特異点として存在した金俊平には感情移入できるところはないのだが、だからこそその理解を超えた“強い父”に翻弄される脇役が光る。金俊平の一生を描くことで、優れた群像劇がまた一方でたち上がってくるのだ。脇役は女性陣がとくに健闘しているが、オダギリジョーなどもまた出色の演技をみせる。
そしてそんな人々が生きた大阪の朝鮮人集落の様子は、ニューヨークのリトル・イタリーの在りし日の様子を、細部にいたるまで手を抜かずに活写したコッポラと比べたくなるほどにすばらしいものがある。崔洋一渾身の仕事と言っていいだろう。
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