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[コメント] ULTRAMAN(2004/日)

「大人が楽しめるウルトラマン」というふれこみを信じさせられた自分としては、大いに落胆させられた。これは、ちょっとだけ金のかかった普通の『ウルトラマン』のTVスペシャルと変わらない。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







主人公が自衛隊に属していることが相違点だという。だが、この物語の中の自衛隊は「科特隊」や「ウルトラ警備隊」と呼び名を変えてみても、なんら意味合いの変わらない組織に過ぎなかった。

ウルトラマンと怪獣の意味合いが違うという。だが、彼らに言葉を喋らせていることは、むしろ存在の矮小化にしか見えなかった。ウルトラマンはいくつかの能力を使うときに何らためらいを見せていないし(唯一飛ぶことができた時だけ、主人公の声で感動させてはいるが、戦闘中に飛行の素晴らしさに感動している余裕があるだろうか)、怪獣が「滅びてしまえ、人間ども!」と叫んで光線を吐くなどは底知れぬ異星の存在とは思えない「人間らしさ」だ。怪獣がウルトラマンに対するベムラーの役割をより「凶悪怪獣」らしく表現しているのは判るが、ゴテゴテと飾り立てた外観はおよそ造形美を感じさせなかった。カラスやネズミを大量吸収してエナジーとする悪魔的能力は面白くはあるけれど、外見までリアリティのない「悪魔」にすることはないだろう。三頭有翼の姿はあたかも『デビルマン』(原作)のゼノンのようだ。

そして売りである人間ドラマだが、この程度のことはTVのウルトラシリーズでさんざやり尽くされたエピソードではないか。病床の子供のために自衛隊をやめ、民間航空機操縦の仕事につく主人公。恋人の怪獣化のために心を鬼にして主人公にも臨み、主人公によって凍てついた心を癒される女性。どこに新しさがあるだろう?TVのウルトラマンも子供に接し、ときには子供から教えられ、そして子供たちを大きな手で守るヒーローだったのだし、それに変身する主人公は持ち前の理想主義で、ガチガチに凝り固まった敵愾心だけの仲間の心を解きほぐしてきたのだ。

子供が楽しいと思うものは、大人には退屈だというのは嘘だ。少なくとも自分は子供であったとき、「子供騙し」の作品はちゃんと判ったし、大人向けのように言われるジャミラやノンマルトのエピソードには全く爽快感は感じられなくとも、感動したものなのだ。子供には出来合いの物語を与えておけばいい、というのは子供への侮辱である。

結局、面白かったのは空中戦で見られた「板野サーカス」だけだった。映画という入れ物のなかに新しいことは何もなかった…のだが、どうやら続編が作られ、サブタイトルは「レクイエム」と決まっているらしい。何だかひどく嫌な予感がするのだが…。

(評価:★2)

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