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[コメント] 宇宙戦争(2005/米)

個人に於いて、ましてや戦争に於いて、全体としての「世界」は「物語」として見通しの効く物事などではなく、只管「状況」に於いて体験されるものでしかないという確信。あるいは開き直り。その潔い開き直りが、この映画の可能性を開いた。面白かった。

この映画でのスピルバーグの「開き直り」は、結局何に由来したものだったのだろう。映画の経済的原則(上映時間の総量とそこに積載可能な描写の総量との比較勘案)からの要請だったのだろうか。それとも同時代的な世界認識に関する(たとえ直観的なものであったとしても)テーゼの意識も含有されたりしていたのだろうか。いずれにせよ、たとえば『プライベート・ライアン』ならば、そこにはそれでも「物語」があり、それによって認識され駆動する「世界」の原理が働いていたのに対し、『宇宙戦争』では世界認識のあり方としての「物語」はすっぽりと形骸化されている(映画の最初と最後に申し訳程度に大状況の「説明」が為されるだけだ)。同様な「戦争」であっても、やはり9.11の体験以前と以後の差異、ということなのだろうか。9.11以降にあっては、世界認識のあり方としての「物語」は成立せず、只管「状況」だけが進展する、と? そう考えれば、あるいはこの映画のそんなスタイルも、同時代的な世界認識に関するうえで、倫理的なものではあったのかも知れない。

(評価:★4)

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