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[コメント] どん底(1957/日)

1957年のハイパーリアリズム、そして予言。
町田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







<登場人物>

巡礼=左ト全:作品中唯一のアウトサイダーである彼の正体は最後まで明かされない。彼の信条は「嘘も方便」。善悪を超えた絶対的な優しさを発揮し弱者を救済する彼はいわば「宗教」そのものである。

遊び人=三井弘次:巡礼と対を成す存在で典型的なニヒリストとして描かれる。彼がズケズケと言葉で他人を切り刻むのは自分と同じ強さを他人に要求しているからである。彼の役割は近代以降「文学」が担ったそれとよく似ている。

大家=中村鴈治郎山田五十鈴:大家にも自分の生活があり何も慈善事業をやっているわけではない。「国家」は国民の血税の上に成り立っている。国家に楯突くときは覚悟の上で。(余談だが俺は大家が鴈チャンであることに全く気付かなかった。口の動きが普段と全然違うんだもの。ホント末恐ろしい役者だね!)

下駄屋の小僧=藤木悠:恐ろしい大家の妻に向かって毒を吐く無垢なる道化者。彼は皆の不満を一時的に解消する一服の清涼剤、「娯楽」の体現者である。

泥棒=三船敏郎;これハマリ役。当時に於ける反社会的存在の代表格である。

その他数名。

<物語>

現状を逃れようという三船の泥棒は「宗教」の慰めも「文学」の諌めも振り払い「革命者」たらんとした。しかし不慮の事故から同士(=香川京子)の信頼を失い計画は頓挫し制裁を受ける羽目に。ああ無常!そして時は流れる。「宗教」の時代は去り、かといって「文学」の影響力も衰えた「今現在」、人々は空腹と孤独を埋め合わせる為今日も今日とて歌と踊りに明け暮れる。一夜の夢でもえぇじゃないか!

ハイ!ドンドンツキチー、ドンツキチー♪

さぁ、映画でも観にいかないか?

(評価:★4)

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