ぎりぎりの極限状態でないと出てこないせりふの数々が今でも頭にこびりついているようだ。

「だったら私を撃てばいいでしょう！　ついでに私の家族も撃ってください、金は払う！」

「おまえはニガーですらない、アフリカンだ！」　などなど。

　舞台はアフリカだが、監督は北アイルランド出身のテリー・ジョージ。内戦を経験し、ある日突然隣人同士が殺し合いをはじめる恐怖を身をもって知った人らしい。この映画の製作会社はデンゼル・ワシントン、ウェズリー・スナイプス、ウィル・スミスのいずれかを主人公ポール役に欲しがったそうだが、監督ジョージが地味なドン・チードルを主役に選んだのは大いに納得。だってポールは実在の人物で、絵空事の戦いしかできないスーパーヒーローではないのですしね。デンゼルは人種差別と戦ってればよし、ウェズリーはヴァンパイアと戦ってればよし、ウィルは宇宙人と戦ってればそれでよし。

　内容とは関係ない話ですが、この作品の公開を通して日本の映画ファンの皆さんの魂の熱さに感銘を受けました。こういう本気汁たっぷりの作品こそ我々が欲しがるものであり、それを理解して我々の叫びに応えてくださった配給の方々に心よりお礼申し上げます。