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[コメント] ミュンヘン(2005/米)

タイトルは「ミュンヘン」だが、ローマ、パリ、キプロス、ベイルート、アテネ、ロンドン、そしてニューヨーク・・・舞台となる都市の美しい顔を眺めているだけで興味深く、スピルバーグってこんなに魅力的に「街を描く」ことができたんだ〜と新たな発見。
緑雨

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







・・・などと呑気な観光気分のコメントを与えるような作品ではないのだが(笑)

だが、こんな感想をイの一番に持ってきたくなるほど、なんとも感情を揺さぶられることのない映画であった。もちろん日本人である自分からしてみると、ユダヤ系のスピルバーグが描いたイスラエル人の感情などもとより理解できるはずもなく、一方でこのレベルでの「報復の連鎖」のメカニズムくらい今さら教えてくれなくてもわかってるよ(少なくとも知識としては)、と言いたくなりもするのである。

加えて、この映画がテロリストもののサスペンス映画としてはあまりに淡々としており、作劇としてあまりにユルい要素が多用されている、という点も大きいように思う。彼らは、間違えて標的の娘を殺しそうになって焦ったり、作戦実行中に家族に会うために内緒でイスラエルに帰国したり、爆弾を思った通り作れなかったり、アジトを相部屋で共用することになったパレスチナ活動家とラジオのチャンネル争いをしたり・・・テロリストという既成概念からすれば驚くほどのユルい要素満載である。

が、視点を換えてみればむしろこのことこそがスピルバーグが描きたかったことではないか、という気もしなくもない。テロリストといっても特別な人間ではなく、常に不安と戦い恐怖におののき安息を求める普通の人間であり男であり夫であり父親なのだ、ということ。そんなユルさを見せていた彼らも、オランダ女を殺害する頃には完全なるプロの「殺し屋」の顔になっている。そしてそれと引き換えに精神は破壊されていく・・・

エリック・バナの悪夢として現れる、ミュンヘン五輪選手村人質殺害事件の回想シーンのスピード感にはゾクゾクとさせられる。

(評価:★3)

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