[コメント] クラッシュ(2005/米=独)
構成・編集の見事さ、各エピソードの設定の奥深さ。あまりにも多くのテーマを内包しつつもそれを確実に一つずつ仕留めていく技量に何もかも忘れて称賛したい。人種問題については、今でしか作れない「アメリカの怯え」を感じた。
過去、国家の衰退は人口の増減に比例してきた。それは日本にも当てはまり、明治期以降の爆発的な人口増加は日本を世界の列強にのし上げ、現在を頂点として伸び続けてきた。今世紀はインド・中国の世紀になると言われている。そして20世紀の覇者たるアメリカも先の2国に続き人口が3億人を遂に突破した。
だが、アメリカの人口構成はアジア系とヒスパニック系の移民によって12%の構成比率を占める「いびつ」な増加を続けている。近い将来、白人系が少数派に堕ちる予測はもはや予定になっているのである。アフリカ奴隷の子孫たちとの確執に精力を使い果たしてきた終着点は新たな確執に変化してきている。
そして問題は彼等少数派白人が富を握ったまま少数派になるという点であろう。かつての南アフリカを彷彿とさせられる。いや、欧州でのユダヤ人の扱われ方に近くなるかもしれない。
これが怯えずにいられようか。
黒人はもとより、増殖する中南米移民・嫌われる韓国人・9.11以降不気味な中東移民。白人の差別は「優越感」ではなく「怯え」から発生するものに変質してきているのではなかろうか。
現代アメリカの日常の問題をあけすけに提起した勇気は称賛される。そして予定調和とでもいうべき「優しさ」に満ちたラストへの収束は単に映画的というよりは、「怯え」からくる「希望」を懇願しているように思えた。
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