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[コメント] タイタニック(1997/米)

(公開当時)2点→(最近)3点。不適切な引用だったらゴメンナサイ。でもこれを言わずには、もうこの映画は語れない・・・。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







そもそもの再評価は9月に起こった航空機テロ。貿易センタービルから人形のように人が落ちていく、または小さい窓に豆粒のように群がる人たちを写した、あのショッキングな映像。何が一番ショッキングかっていうと、叫び声も恐怖に歪んだ表情も発作的な行動に駆り立てられた狂気も、こちらからは何も伝わってこなかったという恐ろしさだった。

そしてすぐさま脳裡をよぎったのが、甲板のうえで石ころのように身を翻弄される人々の映像。ミニチュア的で無機質な再現としか思っていなかったが、そう見えてしまうことがどれだけ恐ろしいかを考えずにはいられなかった。本当は叫び声とかも遠くかすかにしか聞こえてこない方がより怖いのだろうが、自分にとっては表情が見えないくらいの距離を置かれただけでも、その怖さは十分。その怖さとは、神のような目の高さで人間の目にその光景が写った時、向こう側の人間の恐怖が伝わってこないことに、もはや神もホトケもないと思わざるを得ない絶望的な無力感そのもの。

「じゃあ今までそんな光景を写したパニック映画が存在しなかったのか?」と言われれば、もちろんそんなことは無いのだろう。それどころかもし他にそんな映像が思いだせれば、自分の今までの鈍感さへのつぐないの意味も含めて、迷わず1点プラスする。ホントいろいろな意味で、あの事件がわが身に投げかけてきたものは大きかった・・・。

とはいえ、映画自体はやっぱりしっくりこない。キャメロン監督だったら徹底的に細部に拘った再現とサバイバル合戦。これだけでも十分面白い映画になったと思う。っていうか、恋愛要素は無くもがな。舞台となる状況や他の人間との関わりが希薄。なのでいっくら2人が主役とはいえ、圧倒的な背景の存在感の前には、クローズアップされた添え物としか考えられない。やっぱ生き残るんだったら一人でも多くの人間と密に関わっていかないと。ニンゲンという小さき存在としては・・・。

もしどうしてもラブ・ロマンスが描きたいっていうのなら、その後の彼女にもっと比重を置いて欲しい。船での物語はフラッシュバック程度でチョコチョコ入れてくれれば構わないと思う。血も涙も無い女だって意見も多いけど、土壇場で生に固執することには個人的あんまり反論を入れるつもりはない。それより「私は生きる」とは言ったものの、その「生かされた」生、多くの屍の上にある生を彼女なりに思考錯誤し消化し、新たな生活を築いていく経緯をもっと描いて欲しい。そうでないと「生かされた」生の重みがまるっきし伝わってこないし、愛する人に生を授けられてた意義も台無しになってしまっている。最後のシーンだけでは到底そんなの理解できない。

ともあれたルコフスキ様の「ぼくはケイトを応援するよ」の一言に共感。いっくら高慢チキでデリカシーに欠ける女だとしても、あんな形で生を選んだからには、あらためて自分の存在を見つめなおして、意義ある人生を送って欲しいと思わざるを得ない。

もし生きるといった途端に、全てを振り切ってシブとく生きていくって事になったらそりゃコメディだナ。それはそれで面白いし、あの逞しい女優にはむしろその方が向いてる・・・?ま、いずれにせよその時は監督交代は避けられないな。思い入れたっぷりに描いているようで、意外に登場人物に対しての愛情を感じさせないってのが正直なところ。

(評価:★3)

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