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[コメント] トム・ヤム・クン!(2005/タイ)

バーチャファイター3
てれぐのしす

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







あの格ゲー界の金字塔「バーチャファイター」シリーズは、「3」で革命的な進化を遂げた。合気柔術使いキャラ「梅小路葵」の登場である。それまでの全キャラの技は、多彩とは言え「殴る」と「蹴る」と、せいぜい「転ばせる」くらいだったが、梅小路葵の登場により、「いなす」「ひねる」「折る」華麗に「投げ飛ばす」が加わった。このカタルシスは実に新鮮で、コマンドの入力は確かに難易度が高かったが、多くの「葵使い」達は、↓P+K+G やら←P+K やらをパコパコ叩きまくったものだ。まあ俺のことだが。

さて、この『トム・ヤム・クン!』で大々的に導入されたのは、この関節技である。当然、あの華やかな動きはそのままに、とにかくボキボキやりまくる。しかも今度の相手はクンフー、カポエラ、プロレス、道具使いは剣術から鞭使いまで現れるわ、4階建てレストランでは、ワンカットのまま大暴れしながら駆け上がる超人技も披露するわ、うわあああ!もうお腹一杯だあ!!しかも今回妙にバタくさいのは意味なくオーストラリアロケだからかぁ??いや意味なくはないんだろうな。陽気も良さそうだったし。

出色はクンフー使いのジョニーとカポエラ使いのラティフが駆使する足技の、トニー以上の鋭さと、官能的なまでの美しさである。『マッハ!』のときは、非合法格闘場や洞窟の発掘現場での戦いに、紫煙と砂埃と血の匂いがする薄暗さが画面を支配していた印象を受けたが、今回は「鮮明な画面」と躍動する肉体の衝突に「洗練さ」が加わっている。これが意図的なものであるとしたら方向性としては正しい。あと素朴な疑問なのだが、タイ人の国民性における中国人観ってああなのかなあ。何でも食っちゃう残酷な人たちという。まあ残酷は当たってると思うが。

トニー・ジャーがジャッキーを敬愛してやまないのは周知の事実であるが、これほど全編に渡ってジャッキーへのリスペクトに溢れたオマージュ(パクリ)が横溢するアクション映画があっただろうか。路面電車の車庫における「器械体操系」アクションや、ガラスを使ったアクションは、まさに全盛期のジャッキーそのものである。ちなみに蛍光灯と言えば大日本プロレスという大家がいるが。2.5m上の街灯を垂直に飛んで蹴り割るなんて、ジャッキー越えどころか人類越えですか。トニーよ、お前がジャッキー好きなのはわかったが、あまり凄すぎて今のジャッキーの涙腺ゆるめてどうするよ。

さて、格闘ではサービス過剰なくらいに今回でもう豪華絢爛に出し尽くした感のあるトニーだが、まだ未開の領域がある。ジャッキーがそうだったように、アクションは二種類あって、「戦う系」と「危ない系」である。前者に関しては、今作で一定の完成を見せたが、「危ない系」はジャッキーが三途の川に何度も片足突っ込んだ実績という山をトニーはまだ踏破していない。だから次は「飛び降りる系」か「落っこちる系」のアクションから始めて欲しい。

そうそう、あと作品間のインターバル2年は長すぎだ。配給側の事情もあるだろうが、最低でも毎年新作を作っていただきたいものである。いい意味での「粗製濫造」でもいいから。初期のジャッキーだってそうだったことだし。

何?今度は脚本を練りたい?

ぶっ殺すぞ。

(評価:★4)

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