[コメント] 間宮兄弟(2006/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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本作を観るのはかなり躊躇があった。いくつかの理由を挙げると、オタクを題材にした作品はかなり痛々しい感じのものが多く、そう言うのがどうにも苦手なこと。それに森田芳光監督作品はこれまではずれが多すぎたこと。いくつか好みの面白いのもあるけど、それ以上に叩きつけたくなるような作品見せられることもしばしば。
しかし、なんだか妙に評価が高いし…という世間の評判を頼りに劇場に。
少なくとも、良い意味では裏切られた。間宮兄弟の描写は全然痛々しくない。二人はオタクと言うよりは、永遠の子供という意味合いの天真爛漫さを見せてくれたし、それを取り巻く、時として残酷な冷徹な現実との折り合いもちゃんとついてる。彼らはそう言う外界をシャットアウトするのではなく、そう言う現実と共存する知恵をちゃんと持っているのだ。これまで江國香織原作をなかなか表現できた映画はなかったが、これは初めて上手く江國テイストを再現できた作品では無かろうか?(原作そのものは未読なんだが)。
そんな二人の生活と、彼らを取り巻く大人のドロドロした関係とが上手く対比された日常が描かれる。ある意味普通の人の普通の生活が描かれるわけだが、それは不思議と心地よい。どんなに普通の人であっても、人と交流している限りそこには必ずドラマが現れる。そう、彼らは現実から逃げていないからこそ、ドラマが成り立つのだ。ドラマ部分は彼らが直接関係するものもあるが、多くは彼らとは無関係に起こる出来事で、彼らはその影響を受ける形を取り続けている。その影響で悩んだり、苦しい思いをしたりするのだが、それを独自の暖かいタッチですらっと描いているのが面白い。
その何気ないドラマを面白くさせているのが演出の巧さ。何気ない仕草の一つ一つ、表情の一つ一つが間宮兄弟を愛すべき存在とさせている。愛すべきとっちゃんぼうや達。彼らがオタクとは言い難いが、少なくとも、オタク達がなり得る一つの理想型なのかもしれない。
ただ、それだけで見せるのに二時間はちょっと長すぎた。あと10〜20分詰められたら、もうちょっとすっきりとした気分になれるのだが、中だるみというか、後半はかなりだれてしまったのが残念。色々工夫はあっても、基本的にほんわかした雰囲気が信条なので、それで1時間半以上はきつかった。所々で良いから、もうちょっとスピーディにしてもらえば良かったんだけどね。
あ、後一つ。劇中違和感を感じ続けていたが、ようやく分かったのが一つある。私が何故間宮兄弟を「マニア」あるいは「オタク」と呼びたくないかと言えば、部屋が整いすぎてると言う点だった。そこら中に資料やアイテムをぶっちらかしてあったり、雑然と積んであるところがどこにもない。それにあれだけの本があって、一切雑誌類が見えなかったのもあった。我ながら細かいけど、大抵この手の人間は古い雑誌を捨てられずに置いておく事が多い。特に新幹線マニアだったら、当然その手の雑誌はたくさん置いてあって然りだ。
…ただ、前に読んだ江國香織の小説「きらきらひかる」はとんでもない潔癖性が主人公だったから、この兄弟が単に潔癖なだけなのかもしれないけど…要するに、私自身が部屋を掃除すべきだという結論に達した。あそこまでとは言わないまでも、どこに何が置いてあるのか分からないような棚の中とか、DVDや本であふれかえって圧迫感を与える本棚はなんとかしておきたい。と痛切に…
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