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[コメント] ハンニバル・ライジング(2007/仏=英=米)

単独の作品だったらまあ普通。でもこれが「ハンニバル・レクターが如何にしてオレらが知っているレクター博士になったのか」と言う話であったがために残念ながらこの点数。オレが知りたいのはむしろこの作品内で描いた後なのに。
ごう

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この映画を観るとレクターの「その後の異常な殺害方法がどうやって確立したか」というのはわかるものの、肝心の「どうしてレクターが異常連続殺人犯」になったのかというのはわからなかった。というより繋がらなかった。「ギャスパー・ウリエルが後にアンソニー・ホプキンスになるってのはしんどいだろ!」って言うのは抜きにしてもまるっきり見えてこなかった。あ、ギャスパー・ウリエルはかなりカッコ良いです。ちょっと惚れました。

今回の話の主軸は「復讐」である。殺された人間は肉屋も含めて怨まれる対象であった。でも、オレらが知っているレクターはそうじゃないんだ。初登場の瞬間からハンパじゃなく人を残酷な仕打ちで殺めてきた男として描かれてきた。第一作では人を殺めるシーンそのものを連発はしていないものの、そうであると示唆するものが随所に溢れていた。であるとすれば、レクターの人生におけるどこかにおいて「この映画で描かれた(本人の異常な性格によるエッセンスはあるとしても基本的には)復讐としての殺人<「羊達の沈黙」で描かれるまでになった、人を殺めることそのもの」になる瞬間があったはずなのだ。その部分を描いていないせいで、今作は単なる復讐に燃える若者が晒し者にする意味もこめて異常な殺害方法を実践しているような体になってしまっている。だからうっかりレクター博士に感情移入してしまいそうになった。これまでの作品でもレクター博士に感情移入してしまうことはあったが、それでもどこかで「ああ、コイツは異常者だ」と感じて、見ている側を突き放す部分が用意してあった。

原作未読なのであくまでこの映画の中だけでの言及にはなるが、一応レクターが異常であると言う兆候を示すエクスキューズは数箇所用意されていたように思われる。気付いた限りでは

・取調べを受け、帰路につくレクターの後姿を見ながら刑事が「ハンニバル・レクターは8歳の時に死んでいる。今のレクターは人間で無い何かだ」と呟く。

・ムラサキに気持ちを伝えるも、「あなたのどこに愛される資格があるの?」と拒絶される。

などがあるが、そのいずれもがとても弱い上に、クライマックスである船上シーンのあと、カナダでの静かなやりとりも結局復讐の仕上げであることを考えると、ちゃんと機能していたとは言い難く、何よりあれだけの深みを持ったレクター博士がある意味とってもわかりやすいキャラクター、わかりやすいバックボーンで出来ていましたと言うのはこれまで一応映画に全作付き合ってきたにオレにとっては残念以外の何者でもないので涙をのんで残念ながらの★2。

で、ここからは妄想なんだけど、レクターの復讐の一部を仲間割れを誘うように仕向けてその狡猾さを表現したりしてはどうだったろうか?そして何よりムラサキを殺して食べるべきだったんじゃなかろうか。

図らずも自分も愛する妹を自分の身体の中に取り込んでいた

          ↓

そして今も妹を身体に取り込んだ連中を殺して食べることによって自分の中に取り込んでいる

          ↓

ムラサキも食べてしまえば自分の中に取り込むことが出来る

          ↓

また愛する者を殺すことによって完全にレクターは復讐から開放され(フラれた恨みとも言えるけど)、これ以降人を殺すと言う行為とその後食べると言う行為は彼にとって必然性を持つことになり、興味を持った人間を取り込むため、また自分にとってくだらない人間を開放するため殺すようになった。

てな感じになってれば、まあ飲めなくは無かったし、なによりこの作品内でその後のレクター博士へと繋がっていったんじゃないかなと思ったりして。

(評価:★2)

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