[コメント] パットン大戦車軍団(1970/米)
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"I love it."
物資の補給の遅れから、大敗した味方の惨状を視察してのパットン将軍のこの言葉。この常識では桁外れの失言とも取れる彼の発言は、犠牲となった部下に対する彼流の賛辞(弔辞)と思われ、パットンが「第2次大戦」という一大叙事詩の主人公であると共に、彼自身にも詩人的素養があることを示しているようで、非常に印象的だった。
"I love it."
連合軍のチャーチル、ルーズベルト、スターリン、更には、同盟軍のヒトラーやムッソリーニですらも、あの惨状にこれと同じ台詞を吐けないだろう。仮に言ったとしても、到底それは画にならないでしょう。パットンの他に画になるとすれば、戦争に勝つことでヨーロッパを席巻した彼の”友人”ナポレオンぐらいになるのかな?
この台詞に代表される様に、彼の発言はことごとく失言ですが、現場の士気を高揚させることには成功しており、また自らの不遇を招いたという意味で、極めて詩的な発言に思えます。
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パットン将軍にとってこの戦争は、彼が自ら言うように、待ちに待った最大の詩の舞台だった。冒頭、アメリカ国旗の前で出兵する兵に訓示を述べるパットンの姿は、まさにその詩の幕開けを示していると言えましょう。しかし、彼は、一切の権力を剥奪されることで失意を味わい、現場の司令官として戦線復帰しながらも、結局、その幕を閉じることができなかった。このようなパットンの境遇は、エルバ島に幽閉され、そこから脱走することで100日天下を成し、遂にはセント・ヘレナ島に生涯幽閉されたナポレオンに相通じるものがある。おそらくコッポラは本作の脚本作成時にナポレオンの人生をモチーフにしたのではないでしょうか? どこまで本当のパットンを描いていたかは判りませんが、私はパットンという人物に魅力を禁じえない。
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ちょっと本題とずれますが、本作のパットン将軍(ジョージ・C・スコット)。どこかで見たことがあるなーと思ったら、『博士の異常な愛情』で一人三役のピーター・セラーズよりも目立っていた憎めない武断派「タージドソン将軍」ではないですか!! どうりで強烈な個性なわけだ。本作で受賞したアカデミーの主演男優賞を辞退するなんて、彼自身のスタンスもあるのでしょうが、パットンの叙事詩を裏切らない行為でもあり、非常に好感が持てます。
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