[コメント] パンズ・ラビリンス(2006/メキシコ=スペイン)
画面は保守的。要するに、画面上の何を見ればよいか画面自体が指定しているということ。云い換えれば、ひとつの画面ではひとつのことしか起こっていないということ。しかし、優れたアクション演出、CGと実写の違和を減ずるように設計された照明、容赦のない語りはそれを補って余りある。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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イバナ・バケロのキャラクタも「現実に目を背け、空想に逃げ込む少女」という紋切型に陥っておらず、よい。映画が始まっての第一声からして「妖精を見たわ」だったので、「果たして私はこのファンシーな少女についていけるのだろうか」と不安になったのだが、彼女は山中の屋敷に到着すると大事な本を投げ置いてその「妖精」を追い掛けにいったりする。つまり、彼女は彼女のファンタジーをあくまで身体的なアクションを媒介として生きる人間だということで、これは私にはとても魅力的なキャラクタに映った。また、彼女はただ現実から目を背けているわけではなく、女中のマリベル・ベルドゥがゲリラと通じていることにいち早く気づいたように、むしろ現実を鋭く捉えている。だからこそ現実の鏡像としての彼女のファンタジーはいっそう美しく、痛々しいものとなる。
バケロの「死」と「王女としての王国への帰還」を重ね合わせる結末は、確かに発想としては安直だし、じゅうぶん予想できるものでもある。しかし、それは悲惨な物語を生きねばならなかったキャラクタに対するせめてもの優しさなのだろう。私はこの結末に素直に心を打たれた。
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