コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 転々(2007/日)

ストレートな泣かせ映画が跋扈する日本映画界に、センチメンタリズムを意識的に抑制し、家庭なるものへの照れとも取れるような茶目っ気で、立派に家族を浮き彫りにした作品を敢えて提示した三木聡の手腕に唸る。彼の周到とも言える蛮勇は自分を大いに嬉しがらせた。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







三浦オダギリの道中のやり取りは、ほぼアドリブでなされたものから監督が面白いものをチョイスしたものという。それは放送作家でもある監督のギャグには破壊力が及ばぬものの、充分にとぼけていて飽きない味がある。そこにベタベタした感情の這い入る隙間はないが、同時に二人を巻き込んでゆくのは見えない感情の交歓だ。

そして、孤児であったオダギリの三浦との遊園地体験、さらに擬似家族達と囲む食卓が明確なドラマを始めて提示する。殺人を犯した三浦が、オダギリに語った「娑婆で最後に食べたいもの」カレーライスを出されたオダギリは胸を詰まらせる。これは明確な泣かせだ。だが、翌日の盛り上がるべき三浦とオダギリの別離は、極めて軽いタッチで描かれることでオダギリの悪態を産む。これこそ三木演出の真骨頂だ。と言うか、彼は新たな次元に突き抜けたといっていいだろう。カラッとした笑いで浪花節の粘着感を吹き飛ばす秀逸さ。三木の次回作がますます楽しみになってきた。

でも、近所で岸部一徳が映画ロケやってくれないものだろうか(笑)。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (7 人)牛乳瓶 tkcrows[*] おーい粗茶[*] みそしる 林田乃丞[*] セント[*] 浅草12階の幽霊

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。