[コメント] インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国(2008/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
まぁ正直申しまして、今となっては、B級映画だろう。これほどまでにVFXが開発され、映画で何でもできてしまう時代となっては、この程度の追っかけは誰でも可能だ。むしろ『キング・コング』や『ロード・オブ・ザ・キング』に見られる執念に比べれば、以下にこの業界の巨匠といえども歯が立たない。
だが、我々はこの映画を最大の賛辞で称賛し歓迎する。
なぜなら、そのディテールへのこだわりと、スピルバーグとルーカスがずっと追い求めていたもの、それが時代を越えて今この世に結実する、という意味において十分楽しめる映画だったということだろう。誰もこの映画を肯定もできないし、否定もできない。それほどこの二人が残したハリウッドにおける功績が大きいということだ。
この映画を作る二人に、我々が言うような悲惨さは全くない。冒頭のシーンのユニークさ。あの『レイダース』の始まりを思わせるパラマウントピクチャーズトップ画面に見事にシンクロする山。しかし、このシリーズ最大のちっぽけな山から現れるのはネズミかモグラか、このお笑いシーン。全く気負いのない始まりから惹きつける。
レストランでの乱闘シーンも、一瞬ではあるが『用心棒』を思わせる対立を演出する。
このように、インディが最初から暴れるシーンが連続するのだが、思わず目をそむけたくなるような原発のシーンも見事だ。日本人にとってこのシーンは大変複雑だ。だが、あの世界的に有名なインディージョーンズが被ばくする、ということ事態がエポックだ。ありえないことが起こるのがこのシリーズの醍醐味である。
結局、この映画はかつての冒険活劇を劇場の大スクリーンに復活させ、アナログに見えてデジタルな世界が延々と続くわけだが、最後の最後にこの映画の原点に到達する。それはルーカスにとっては『THX』であり『スターウォーズ』であり、スピルバーグにとっては『未知との遭遇』であり『ET』だったということだ。彼らがこの世界に入ったあの頃、それはまさに宇宙に対する造詣だったはずだ。そして宇宙人が友好的である、というのが彼らのスタンスだった。
しかし、その後宇宙人は『エイリアン』や『インディペンデンスデイ』などに代表されるように、地球人の敵となってきた。しかしこの映画を作る二人にとって宇宙人は相変わらず友好的な存在であり、地球の歴史を生みだした神を思わせる存在なのだ。
反面人間の愚かさがこのシリーズで重ねて強く語られている。先述したとおり、核実験のシーンも然りである。そして過去のこのシリーズでも人間の愚かな行動そのものが自然を破壊し、宇宙との接点を失う原因と到らしめている。
二人はこの映画である程度の仕事をやり遂げた大御所として、原点に回帰しようとしている。
スピルバーグは『宇宙戦争』を撮り、ルーカスは『スターウォーズ』を完結させた。
この二人の業績をもって、この映画は二人が子供だった頃の活劇と、映画界が目指そうとした宇宙への造詣を達成しようとした美しさに、えもいわぬ感動が呼び起こされるような気がするのだ。
忘れてならないのは、ハリソン・フォードの活躍なしに、この映画は成立しなかったことだ。冒頭のカーレースのシーンは明らかに彼の最初のヒット作『アメリカン・グラフィティ』を意識している。彼が60歳になってしまったことにも驚くが、その60歳のおじさんがここまで大活躍することができることに驚き、感動するのだ。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (7 人) | [*] [*] [*] [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。