[コメント] 告発のとき(2007/米)
派手なシーンも巨大な陰謀めいたものもなく、淡々とした描写の中で、戦争による人間性の喪失とはこういうものかと、言いようのない恐ろしさが身体全体をつつんでいく感じがした。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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衛生面やいつ攻撃されるかもわからない日常的な死の恐怖という戦場の過酷さよりも何よりも、自分が刺し殺した男の父親の前で冷静に、特に悪びれるさまもなくその様子を話す。
人を刺し殺したが、刺される側と刺す側が入れ替わることも当たり前であること、死体の後片付けよりも、腹が減ったからとメシの方を優先させたこと、最後に「心からお悔やみを申し上げます」と父親に声をかける。
丁寧な態度ではあるが、いったいこの男とは人間なのか?と思わざるを得ない。相手が、人間が、目の前にいて話しているのだろうかと思わざるを得ない、なんとも言えない恐ろしさを感じた。
うっぷん晴らしでケンカをすることはあっても、ナイフでメッタ刺しで殺すことは戦友なら、仲間なら、しないというかつての軍の情景が、まったく通用しなくなった。
イラク戦争というものが、アメリカにそういう現実をもたらしているということを、静かに告発する映画ではないだろうか。
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