想像していたよりは面白かった。オレ的には満足。場面場面を切り取れば、あの（巨匠としての）宮崎駿は健在、と言えるだけの見せ場があったと思う。手放しで「傑作だ」と褒めることなど到底できないが、まだまだ引退させるのは惜しい、と思わせた。

相変わらず、謎は多い。ストーリーは、うわべだけ追えば「単純」と言えるし、大人的な見方をすれば「難解」でもある。ツッコミたい箇所を挙げればそれこそキリがない。…「説明が足りない」のは、もはやこの監督のトレードマークのようなもので、慣れっこになってしまったのでもう言及する気にもなれない。

…作品自体が、細かな重箱の隅つつきをあざ笑うかのような、批評を許さない体裁になっている、とでもいうのか。カオスはカオスのまま放っておくのが最近の宮崎駿だし。ましてや、今回は「ちょっと高級な児童文学」みたいな内容で、「ファンタジーとして、おおらかに解釈せよ」という暗黙の了解を要求されたように思ったので、かつて私が『ゲド』や『ハウル』のレビューで書いたようなツッコミは、今回はする気になれません。（ある意味、『トトロ』なんかよりも遥かに子供向け。こうして見ると、『トトロ』が如何に隙のない、精緻なつくりになっていて、きちんと大人の鑑賞に耐えるものになっていたかが、今更ながらよく分かる。）

…一点だけ気付いた点を。ポニョが大波の上を走りながら宗介とリサの車を追いかけるシーン。（本作で一番宮崎アニメっぽい、名場面のひとつ。）ここで流れていた音楽は、ワーグナーの「ワルキューレの騎行」にわざと似せて作ってあった。おそらくポニョの本当の名前が「ブリュンヒルデ」であることと無関係ではないだろう。（分からない人はググって。）

あともうひとつ、どうしてもこれは言いたい。（言わないほうがいいのに、言う。）

人間の姿になったポニョ（5歳相当）は、最高にカワイイ。萌えまくりでした。ごめんなさい。（私がこの映画に付けた4点のうち0.5点くらいは、「人間の姿のポニョが可愛かった」ことによります。）ごめんなさい。