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[コメント] アキレスと亀(2008/日)

芸術がそばにあることは、別に重要じゃない。
夢ギドラ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







マチスの人生は、芸術とともにある。芸術は一人の人間の一生を変容させるには十分な力を持ってはいるが、結局のところ、芸術のみでできることは少ない。それだけでは、幸福にも不幸にもなりえないのだ。マチスは様々な人に出会い、様々な残酷な出来事に遭遇するが、そのとき芸術は毒にも薬にもならず、ただ寄り添うように傍にある。そして、無口なマチスと人を繋げる架け橋となる。そうやって出来た家族。ああ、家族は素晴らしい!って話だと思いました。観客は、ゲラゲラ笑って、ちょっと幸せになって劇場を出ることが出来る。良い映画を観たなあ〜とおもいました。

とにかく笑えました。いや、まあ内容が、、衝撃的な絵を作るために自動車で白い壁に激突して人が死ぬとかで、笑ってしまうのですよ。芸術家を志しているのに、かなり迷走して画商の望むままに動いてしまうとか笑えるし。マチスは絵がうまいけれど、美術学校に行けば、マチスくらい上手い人間がたくさん居る。みんな同じくらい上手いデッサンが描けるとか笑える。モンドリアンみたいな絵が置いてある部屋で、裸体像を描いたら、ピカソみたいになってしまって背景にはダリの溶けた時計が。これは才能ないんじゃ…と思うが、麻生久美子が何故だか嫁に来るんだから、笑える。てか、マチスという名前は、画家のマティスをもじった名前かあ、馬鹿な親父が付けたのだ笑える。限界を超えるために溺死しそうになる夫と、殺人未遂で違うんです違うんですとか言う妻も笑える。自殺しようとしたのに、死ねないところも笑える。死のうとしているのに、みじめったらしく、ヒマワリを描く気なのも笑える。ヤケクソになって錆びたコーラ缶を20万円で売りだしてみたら、なんか良いかも〜と言ってくれる人が居て、つまり芸術の価値ってなんなの!!で笑える。すごい物悲しさとともに、笑えますね。うん。

アンチ芸術のような映画に見えますが、マチス一家の生活は、すごく微笑ましいんですよね。芸術がなかったら、なにもなかったし、だから、芸術を否定してないなあと。で、奇跡のように素晴らしいのは、ラストの樋口可南子の笑顔。それから、否定も肯定もしないから、錆びたコーラの缶(芸術)を夫が投げて、二人の傍に転がってきて、妻が蹴り飛ばす!!!!

ちょう余談ですが、小学校で行われる算数の授業がまったく酷い。分数の足し算を教師が教えていますが、分母はそのままで分子だけを足すとかテクニック的なことしか教えておらず、真理が見えてこない。北野監督は芸術家になっていなかったら、数学者を目指していたそうだから、この算数の授業は興味深かったです。

(評価:★5)

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