[コメント] WALL・E ウォーリー(2008/米)
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本作の出来は素直に感心。元より子供用に作られているはずなのに、細かいネタに70年代のSF映画ネタが散りばめられていて、映画マニアやSFマニアにも楽しめるという凄い間口の広い作品になってた。アニメとはそもそもそういうものだという話もあるが、ここまでみんなに楽しんでもらいたい。という意識に溢れた作品に出会えることは滅多にない。それだけでも充分感心出来る。
物語も凄く良い。本作の物語性を称するに、本物の“純愛”であろう。あらゆる映画は愛を語ると言われてもいるが、ここまで突き詰めた純愛とは珍しい。 その意味でここにロボットをもってきたのは慧眼と言うべき。
ロボットを使う利点とは二つある。
一つにはセックスが介在していないため、「あなたがここにいることがただ嬉しい」という原初的な愛が描けること。人間が主人公であれば、そこには行き着くところは男と女の間柄になるので、その関係には自ずと駆け引きが生じてくる。ご褒美として愛が与えられるから、そのため主人公が頑張るという構図になっていくのだが、ロボット同士の場合それはない。ただ一緒にいたい。それ以降の欲望が無いので、ただそのためだけに、どんな無茶なことでも突っ走れる。私にとって永遠のベスト映画『小さな恋のメロディ』が何故好きなのか、というと、やっぱりこれなんだな。と再認識させられた。
もう一つは、ロボットだからこそ差別的な描き方が可能と言うこと。ここでのウォーリーは、非常に単純な存在として描かれる。知能程度を言ってもかなり低いだろう。人間を主人公にすると、この描き方は不可能とは言わないまでも、主眼が変わってしまう。これまた好きな映画『I am Sam』のように、主人公の存在そのものを描く作品になってしまう。だけどそれがロボットである以上「仕方ない」という目で観られる。 このウォーリーの存在と行動様式の単純さこそが、本作の最大の売りであり、その一途な純愛こそが本物の感動を呼ぶ。
オープニング部分を観れば、ウォーリーには自己保全のプログラムもちゃんとあるし、だから700年も生き残れてきたのだが、そんなプログラムなんて関係ない。イヴと一緒にいられるんだったら、自分が壊れようが何だろうが構うことはない。ただ彼女の元に突き進む。その結果本当に壊れてしまうことになったとしても、それがイヴのためなら…上手い上手い。
ピクサー作品の大部分は子供用に作られているけど、実際作品を本当に楽しめるのは大人、しかも70年代を知ってる大人の人というジンクスは本作でも健在。いや、最も端的にそれを示したのが本作なのかもしれない。本作は地上と宇宙の二部構造に分かれているが、そのどちらも凄い懐かしさを感じてしまう。特に後半の宇宙の話になると、『2001年宇宙の旅』のリスペクトが特に激しく、ネタとしてもかなり笑えるし、完全に子供を置き去りにした設定が展開。こういう細かいところでしっかり笑わせてくれるのも本作の良さだろう。考えてみると、わたしの好きな作品を次々に思い起こさせてくれるってのも、大きな楽しみだな。
異様に間口が広いため、誰にでもお勧め出来る。というより、是非劇場で観てください。とお勧めしたい。
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