[コメント] ベンジャミン・バトン 数奇な人生(2008/米)
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あえて俗に、ショーレースにからめて、意地悪く言うなら、『レボリューショナリーロード』とディカプリオの圧勝だと思った。
この『ベンジャミン・バトン』、人の誕生も老いも死も旅も人生も恋も愛もセックスもすべてがそらぞらしい。ブラッド・ピットにいたっては、その役どころも演技も、CG以上にいんちきくさい。
たとえば初体験のくだりだ。そもそも、このテーマでもっとも重要なのは、「外見は老人だけど、中身は子供」という設定をいかに表現するかだと思うのだが、それがここでも欠落している。それまでのシーンで老人扱いされる子供の困惑とかが希薄だったように、筆おろしのとまどいとかが一切ないのだ。この時点で、今、彼が何歳なのかが、もう実感としてわからなくなった。
たとえばベンジャミンが妻子から去るくだりだ。彼はなぜ去らなければならなかったのか――彼が妻子といることでなんか致命的にまずいことが起きるとか、そういう観ている側にも伝わってくるような、しっかりとした理由付けのドラマがいっさい展開されない。ただ、ベンジャミンがそう思ったからそうする、ストーリーは一事が万事そんな感じで退屈だったらありゃしない。
『セブン』や『ファイト・クラブ』ではひたすらしかけで勝負していたのが、『ゾディアック』でフィルム・メーカー志向になったと思ったら、もう巨匠病の発症か。
ラストで、赤ん坊になって死んでいくという現象の哀切をまったく演出できていなかったのを見ても、負け映画確定だと言わざるをえない。
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