[コメント] スラムドッグ$ミリオネア(2008/英)
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予告編では最近の日本映画をいくつかやった。ギャグと泣きをまぜた演出で原作の小説があったり、芝居のような脚本で、映画としてはどうなんだと思った。予告編をみればそれで八割わかる感じがする。傑作は初めの10分で決まる。本作はのっけの取調室のドアップ、貧困街の描写、クイズのシーン、の3つをカットバックでつないでいく手法をとる。これは映画的な常套手段である。だけど最近この手の展開があまりみあたらなかった。これが映画だよ、これだけでうれしい。だが
すばらしいのはその各シーンで傾き加減の画面、計算しつくされたような遠景近景の構図、スラムドッグたちの躍動感と効果音、なによりカットバックのリズムとその提示するイメージがもうこれはまぎれもない映画の文法。最後までこの手法で押していく。もう話は見えているが、いくつか意表をつく展開があって、思わず息をのむ。えっ、そうくるのか、と驚いているうちに話はどんどん進む。それでもベタな展開は外さない。インド映画の王道もちゃんとやってくれる。
さらに役者がすばらしかった。みのもんたそのままの司会者や山崎努がやったら似合いそうなやくざの親分や、そういう脇役にきちんとした存在感のある役者をおいて、主人公の幼年少年青年時代を担う役者の自然でいてしっかり演技している姿はまったく見飽きなかった。
過酷な現実と残酷な描写もバランスよく映画的な枠の中にしっかりとおさまっている。脚本と演出のさえはもちろんだがこのバランス感覚が見終わった後の印象を良くしている。久々の傑作である。
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