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[コメント] スラムドッグ$ミリオネア(2008/英)

それにしてもジャマールとラティカの子役二人の可愛さは反則だ。あれはない。
Myurakz

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 最近たまに「全身で呼吸するように映画を観ている」感覚になることがある。頭で考えて鑑賞するんじゃなく、画面から出てくる色や音が体の前半分から溶け込んでくるような感覚。そういう映画に会えたとき、僕は「この時間が終わらなければいいのになぁ」と思う。もちろん頭で考えるタイプの良作も大変に面白いんだけど、本当に好きなのはこういう時間を有した映画だ。頭を使うことさえせず、ただただその空気を全身から吸い込むだけの時間。

 今作の冒頭、子どもたちがスラムの中を駆け巡るシーンは正にそういう瞬間だった。家々の屋根やたなびくサリーの野太い色彩、無遠慮なまでにカメラに飛び込んでくる直射日光、大音量で刻まれる原始的なリズム。その全てがスクリーンから溢れ出して、客席に轟々と雪崩れ込んできた。とにかく圧倒されたんだ。圧倒的に圧倒された。もの凄く幸せな瞬間だった。

 この映画は基本的にはそういう作品なんだと思う。物語自体はお伽噺だし、その枠内でさえ突っ込むべきところは数多くある。人気テレビ番組がモチーフになっているのも、チープと言えば大変にチープだ(というか個人的には映画がテレビの下に置かれているようで何か悔しい)。でもだからこそ物語は厳格な規制から解き放たれ、映画はその自由な光や色や音を存分に振り回すことができるんだ。この映画はそんな“余地”からくる“熱”を存分に持ったとても贅沢な映画だ。ダニー・ボイルはその余地や熱を計算して描き出してきた。その上でのあの圧倒的な力を出すっていうのは本当に凄いことだと思う。

 僕はこのダニー・ボイルという人を「商業的視点で空気を描く監督」だと思っている。『トレイン・スポッティング』はその最たるもので、(僕は好きなんだけど)それこそ空気感だけで出来ている映画だ。逆に『ザ・ビーチ』みたいな「そもそも描こうとした空気が失敗」という映画はゴミになる。まぁどっちにしてもそこには人生を変えるような価値ある物語はあんまり無くて、彼はただその気だるさや退廃、希望や絶望を非常にキャッチーに匂い立たせてくる。今作はその対象が“熱”に置かれたってことなんだと思う。

 だから僕はこの映画であまり愛とか希望とかを考える気にはならなくて、ただもうひたすらにその空気を「気持ちいい、気持ちいい」と吸い込み続けさせてもらった。計算と技巧に満ちた作品の上で、極上の自由を謳歌させてもらった。中流階級である自分が僅かに抱くスラムへの憧れに豪腕パンチを打ち込まれた気分だ。なので正直言うと、ラストの「D:運命だった」だけは蛇足だった。あれくらいは観客を信用して丸投げしてくれていい。でもそれを差し引いても余りあるくらいに、とにかく熱くて眩しくて目まぐるしくて、最高に気持ちのいい時間だった。考えれば考えるほどオスカーっぽくない映画だけど、それらしくあるより100倍愛せる映画だと思う。子役も可愛いし。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (6 人)グラント・リー・バッファロー[*] IN4MATION[*] 甘崎庵[*] サイモン64[*] ペペロンチーノ[*] ぱーこ[*]

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