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[コメント] フローズン・リバー(2008/米)

傑作。映画は社会問題を下敷きにしているが、主人公である二人の女はそれとは違う次元に存在している。新聞記事には載らない生身の個人の姿がここにはあり、それがフィクションの力といえる。
shiono

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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脚本がまたいい。メリッサ・レオとミスティ・アパームの出会いから、お互いがお互いを必要とする理由まで、二人の状況を描きながら必要な情報を観客に提示している。

トランクが車内から開けられる車とか、視力が悪いので運転できないというアパームの事情(とはいえ、冒頭では彼女はハンドルを握っていたから、夜目が効かないということだろう)。アパームのコネと情報が、レオの車と拳銃、白人という身分とぶつかり合いやがて均衡する前半は、上質のハードボイルドサスペンスだ。

ミッションを遂行しながらお互いの身の上が飲み込めてくる後半は、赤ん坊置き去りのエピソードで飛躍し(息を吹き返した赤子をモーテルの母へ届けるくだりの無言のシーンは感動的)、レオの息子チャーリー・マクダーモットの健気なクリスマスエピソードを絡めて、最後の仕事へとさらにギアを上げていく。

終盤のアクションとレオの決断にしても、新たな家族となったラストシーンにしても、悲劇と幸福のあり方が実にまろやかで心を打つ。主人公の不器用さ、生き下手さ加減にイライラするのではなく、逆に、なんだか情けなくも愛らしく泣けてくるのだ。うまいなぁ。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (6 人)寒山拾得[*] IN4MATION[*] まー 3819695[*] けにろん[*] ぽんしゅう[*]

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