[コメント] アバター(2009/米)
テクノロジーを追及するのは結構なことだが…。
特撮技術の進化を体感することができたという点は良かったし、その技術をひけらかすような作り方がされていないところにも好感を抱いた。が、かたやキャメロンの映画監督としての演出力に関しては、停滞、もしくは後退しているなという印象を強く持ったのも事実だ。
例えば彼の出世作である『ターミネーター』は、ただ追われ続けるという単純構造の中にも追われ続けている恐怖が途切れることなく漂っていたし、『エイリアン2』にしてもリドリー・スコットが構築した世界観を損ねることなく、むしろそれ以上の精度をもって映画的な興奮に満ちた戦いの世界が展開されていたものだが、それがこの『アバター』ではどうだ。やたら派手派手しい戦闘シーンが繰り広げられてはいるものの、そこには彼らしい映画的な驚きに満ちた演出は何もなかった。それが悲しい。
テクノロジーを追及するのは結構だ。何もそれが悪いこととは言わない。ただ、そればかりに気をとられて過去の作品を顧みながらより優れた演出力を磨こうとしないのは、それを悪いことと思わず「魂の木」を傷つけようとする人類と同じくらい愚かなことだと私は思う。
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