[コメント] 誰がため(2008/デンマーク=チェコ=独)
ハラワタにずん、と応えてくる重量感。自由を奪われた怒りをテロルにぶつけてゆく若者たちの心情は勇壮だが、それは若さゆえに、海千山千の中年女やゲシュタポの要人にいとも簡単に覆される。自分たちの憤りの矛先を定めるべく右往左往する男たちの、なんと哀れなる事か。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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ここには自らの国を蹂躙されたものだけが知る怒りと、それを何処に向けるべきかに彷徨する男たちの辿る皮肉な末路が描かれている。
一人は敵の情婦に心惹かれたがゆえに、一人は妻子を持つというごく当たり前のくびきに繋がれたがゆえに弱さをさらけ出す。ナチスに属するものとて妻子がおり、理解力も人並みに持っていると思うだけで、テロルはこんなにも辛いものとなる。テロリスト(正確にはレジスタンスなのだろうが)としての自分を貫くことは、こんなにも人知を超えた精神力を必要とされることなのだ。
ここから、成熟した権力の上層部にあるものの限りないしたたかさ、恐ろしさを知ることが出来る。所詮若者のルサンチマンで対抗できる存在ではないのだ。ゲシュタポの高官は、死せる勇者達を丁重に扱うことを部下に命じた…自分の命を狙ってきた愚かさを彼らに少しの言葉で警告し、挙句に殺させた後に。彼らはこんなにも「人格者」なのだ、正義の若者が戸惑うほどに! 嗚呼!!
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