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[コメント] 座頭市 THE LAST(2010/日)

面白いシーンや美しい画が随所に見られるのに、物語を串刺しにする軸がなく統合性に欠ける。仕込み杖を置いた「静」から、再び「動」へと爆発する市(香取慎吾)の感情の躍動が不明確なのが致命的。カタルシスなきまま、延々と引き伸ばされる「THE LAST」に辟易。
ぽんしゅう

少ない出番にもかかわらず石原さとみの無垢な可憐さは輝いていたし、ヤクザの妻の矜持を貫く工藤夕貴の気丈さと艶っぽさも魅力的だった。用心棒浪人豊原功補が醸す不気味さも面白いが、何といってもエキセントリックな仲代達矢のぶっ飛んだ狂気の親分ぶりが素晴しい。もう少しふくらませて出番を多くしたら『ダークナイト』(08)のジョーカー(ヒース・レジャー)の域にまで達していたのではないかと思うほどだ。さらに随所に見られるフォトジェニックな笠松則通の画作りも、それはそれで美しいのだが、すべてがバラバラに存在を主張していて映画としてのまとまりが著しく悪い。

原因は香取版座頭市のキャラクター付けの不明確さにある。その風体や女房持ちという設定からして香取慎吾が演じる市が勝新太郎の座頭市と連続性を持っているようにはとうてい見えず、その必要もないと思う。その点で香取の座頭市は、勝版とはまったく別の盲目の渡世人でかまわないと思って観ていた。しかし阪本順治と香取慎吾が作ろうとしている座頭市像が、勝版の踏襲なのか別ものなのかが曖昧で最初から最後まで判然としなかった。この座頭市像の欠如が、そのまま映画の軸の欠落となっているのだろう。「この市って、いったい何者なんだよ?」という曖昧さは、ヒーロー娯楽ものとして致命的だ。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)煽尼采 けにろん[*] ペペロンチーノ[*] おーい粗茶[*] 3819695[*]

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