[コメント] 白いリボン(2009/独=オーストリア=仏=伊)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
ぽんしゅうさんの書いておられるように、上層部からの抑圧が最下層、もしくは最下層へ行く途中で悪意へと変わり、針金や炎のように具体的なものとなってトップに跳ね返ってくるという、時代設定は昔だが現代においても通用する普遍的な話。題名の「白いリボン」は、子供たちを「良い方向」へ導くための厳しい規律や躾が、実は「悪い方向」へ向かわせるものだったという象徴だろう。
ハネケはそれを描くのに十分成功していると思うし、撮影・美術・演技陣など全てにおいて立派。しかし一方でそれぞれの事件の犯人を曖昧にしたため、全体の輪郭がぼやけ大きな突出部に欠けてしまったという印象も否めない。「イデオロギーに盲目的に追従する人々とその結果を描きたい」(by監督)のであって、犯人探しのミステリーを重視してないのはよく分かるけど。
それと批評でよく見かける「ナチズムの台頭を暗示云々」みたいなものは鑑賞中あまり感じなかったな。まあ言われてみると何となくそんな気もするが。
以下、個人的な推理。一回観ただけなので間違いが多数あるかと思われますが、大目に見てやってください。
事件は覚えてる限り、1.医師の落馬 2.小作人の妻が転落 3.キャベツ畑が荒らされる 4.ジギの連れ去り 5.窓が開いてたせいで家令の赤ん坊が死にかける 6.荘園の火事 7.小作人の首吊り 8.牧師の小鳥が串刺しに 9.カーリへの暴行 10.助産婦と医師の失踪 の10件。
うち3と8は観た人なら分かると思うので割愛。
橋の欄干を歩いていた場面から推察して1はマルティン(とクララも?)。4もこの2人。
6は恐らく小作人かその息子。で、責任とって7で自殺。
9。エルナの夢の話から子供たちという線もあって難しいが親を呪う書付、助産婦との諍いから考慮して医師が犯人。10は想像だが、犯人に気付いた助産婦が医師を殺し、死体を隠して逃走。カーリがどうなったかは皆目見当がつきません。
2。男爵の安全管理に問題があったものの、これは本当に事故死と解釈していいと思う。
5。男の赤ん坊をうとましく思っていたわずかな描写から、家令一家の兄弟ではないかと考えます。
全て子供たちが犯人という説はちょっと単純すぎるから複合犯説を採りました。 ちなみにハネケ曰く「全ての事件に、論理的な説明がなされている」らしいです。ほんまかいな。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (4 人) | [*] [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。