[コメント] 灼熱の魂(2010/カナダ=仏)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
まず、テロにはテロをという循環が絶たれていないことを僕たちは知るべきである。彼女は生きることを選んだがために数奇な運命を辿ったが、いくら拷問を受けようが人を殺めたという事実は消えないはずだ。映画では人を殺めた反省・懊悩等は彼女の表情からは窺えなかったが、そもそも彼女がわが子供たちにさせたことは一体全体何だったのだろうか。
この作品で一番分からないのは何故母親が真実を手の込んだやり方で伝えたかということなのである。オイディプス王であるなら、もっと本質的な命題があるのだろうけれど、敢えて真実を明かしてそれにどんな意味があるのだろう。
現代のオイディプス王もさることながら、オイディプス王の子供たちもこれ以降現代の荒野に彷徨うだけなのである。そんなことを母親が敢えてする必要は全くない。そして、それは人間としては生きていく上では明らかにしてはいけないものだったのではないだろうか、と思う。墓まで自分が背負い込んで持って行けばいい代物なのである。それは映画的には衝撃的ではあるが、どうも見終わった後の読後感が悪過ぎるのである。
というか、自分の頭の中でいまだ整理できないだけなのかもしれない。悪く言えば、あのミステリーのラストを導くために民族の闘争が使用されている感じもする。映画的にはなかなか鋭いところも多かった作品だけに、最後に来て興醒めと言う僕の印象である。敢えて言えばこの重いラストのために今までのすべてが拡散されてしまうのである。これはやはりやり切れない。
この映画はかなり賛否両論の映画であるまいか。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (5 人) | [*] [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。