コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 赤ちゃん教育(1938/米)

コメディ映画の最高作を敢えて選ばなければいけないとしたら多分これを選ぶと思う。映画館で最も呵々大笑した映画がこれ。ハワード・ホークスの奇跡的なコメディ。
ゑぎ

 書きたいことはいっぱいあるんだけど、ここではちょっと的を絞ります。『赤ちゃん教育』での電話の使い方の話をしよう。

 映画の中でよくある電話の使い方は、相手が見えない、ということから来る、恐怖や不安感を演出したものでしょう。こういった例としては、誘拐ものが真っ先に浮かびます。ヒッチコックなら『知りすぎていた男』、黒澤天国と地獄』、ドン・シーゲルの『ドラブル』などなど。他にも『となりのトトロ』の中で、「さつき」がお父さんの研究室へ電話をするシーンの、なかなか繋がらない不安感。これらは、主に写っている人物のリアクションによって、映画の感情を画面に定着させています。

 そこで、ホークスの『赤ちゃん教育』です。この映画では、上にあげた例とは全く逆に、画面に写っている側の言動で、電話の相手(見えない側)を恐怖と不安におとしいれ、それを抱腹絶倒のコメディ・シーンとして提示します。キャサリン・ヘップバーンが獰猛な豹に襲われている様子を、いかにして電話の相手のケーリー・グラントへ伝えるか!

---------------

#ここからは蛇足です。上にあげたような電話の映画的な機能を意識せず、ただの小道具として使った例として、キャプラ素晴らしき哉、人生!』のジェームズ・スチュワートと、ドナ・リードのキス・シーンがあると思う。二人がキスしている間も電話の相手が喋っている、という面白さはあるけれど、主に二人を距離的に接近させる目的として電話が機能している。素晴らしく緊張感あふれるアップカットだとは思いますが...。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (7 人)寒山拾得 動物園のクマ[*] Orpheus ペペロンチーノ[*] 3819695[*] りかちゅ[*] くたー[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。